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第6話


 貴子の日本タイトル初防衛戦の激闘から1か月が過ぎた。日中は残暑が厳しく暑い日々が続きながらも朝晩は涼しくなり秋風も吹き始めていた。日中は暑くてプールも恋しい日和の9月のある日のことだった。原島ジムへと練習に来た貴子は、ジムに入ると同時に会長から呼ばれて会長室に入った。しばらくすると、

「たかちゃん。たかちゃんの2度目の防衛戦の相手が決まったよ。今度の防衛戦の対戦相手は日本ランキング1位との指名挑戦試合となり、対戦相手は西村江麗奈に決まった。試合はクリスマスイブに東京の有明コロシアムで開催の予定で、当日のメインイベントは男子の世界タイトルマッチとなっており、その試合のアンダーカードのセミファイナルの試合として組まれることとなった。今後の練習のスケジュールは有美に聞け。有美からの話によると、まだまだ日中は暑い日々が続いているから本格的な練習は10月末からをメドに開始の方向としているみたいだ。」

との会長からの報告だった。ジムの練習スペースに戻ると、練習生のミット打ちの練習の相手をしている有美の姿があった。

「たかちゃんの今度の対戦相手。初防衛戦の対戦相手とは比べ物にならないくらい強いみたい。高校時代は北海道の高校のボクシング部に在籍していた時代は試合に負けた相手、1人しかいなかったみたいだ。ちなみに、この西村江麗奈。日本人とロシア人のハーフで、彼女の母親はサハリンの出身との話だ。その関係から、彼女は高校卒業後の進路を巡ってボクシングの強豪校の大学からオファーがあったみたい。だけど、彼女は強豪校の大学からのオファーも断り、オリンピックの強化指定選手の話もあったんだけど、こちらも断ったんだ。どちらも断ったことに対して西村江麗奈本人は母親の故郷のサハリンで試合をしたいとの夢を抱いており、プロに転向して結果を残して、いずれはサハリンでの凱旋試合をしたいとの夢を抱いて東京の洸栄ジムに入門してプロの道へと進んだとの話みたいだ。だから、初防衛戦のような試合をしていたらKOされるよ。試合には敗れたけど、大阪で戦った初タイトル戦を思い出さなきゃいけないよ。」

との有美からのアドバイスだった。

 貴子の2度目の防衛戦の対戦相手が決まってから最初の土曜日のことだった。貴子のスマホにいとこのちえみからメールが届いた。たまたま今週の土曜日は仕事が休みだったみたいだ。



 今日のランチ。いつものファミリーレストランで一緒に食べない?


 ちえみ



との内容だった。



 いつもの待ち合わせ場所で会おうか。11時半でどうだろう。


 たかこ



との返信をすると、



 そうしようか。


 ちえみ



との返事があった。



 いつもの待ち合わせ場所で貴子とちえみが落ち合うと、それから2人でいつものファミリーレストランへ入った。貴子にとっては試合前の計量検査明けの行きつけの店で、計量検査明けの時と同様にいつもの席に2人が座ることとなった。ランチのメニューの注文を終えると、ちえみはカバンから旅行のパンフレットを取り出した。

「実は10月の3連休明けに4日ほどまとまった有給休暇が取れたんだ。そこでだけど、帯広ばんえい競馬観戦ツアーの2泊3日のコースに参加しようと思っているんだけど、たかちゃんも行くつもりない?」

との話だったのだ。

「そういえば、ちえみ。バスガイドの仕事のローテーションが土曜日に休みになると、時よりだけど競馬場に行くことあるよね。ちえみは競馬好きだから、おそらく帯広のばんえいにも興味があるように思えた。まぁ、競馬の話はともかくとして、北海道へ行くのは3連休明けの次の週末明けでしょ?」

と貴子が聞くと、

「そうだよ。3連休明けの次の週の月曜日から3日間の日程で予定しているんだ。初日は競馬を楽しむこととなるんだけど、2日目以降は最終日の帰りの飛行機の時間まで自由行動となっているんだ。特に、このツアー。2日目以降の行程で帯広で競馬が開催されたら、希望者は入場券の手配もしてもらえるんだって。そういえば、私の競馬友達も昨年の春先に参加して2日目以降も競馬観戦を楽しんだとの話を聞いている。たかちゃんは、あまり競馬は興味ないみたいだけど、この時期は紅葉が綺麗な時期なんだよ。こっちの方では、紅葉なんて先の話だけど、一足早く北海道で紅葉見物というのもいいじゃないの。」

と、ちえみが言うと、

「この時期に紅葉見物かー。いいよなー。」

と貴子は北海道旅行に興味を示した。

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