第69話

貴子の日本タイトル初防衛戦の試合日が近づくにつれて高校野球の方も甲子園を目指しての地方大会が佳境へと近づいてきた。夏の甲子園神奈川大会では、貴子の母校の大串がシード校の山北明琳館を相手に初戦突破となった勢いから快進撃を繰り広げてベスト8へと勝ち上がったとの情報を、貴子が日本タイトル初防衛戦を戦う1週間前のテレビのニュースで聞くこととなった。貴子が恋心を持っていながら失恋する結果となった相手の春樹の婚約者の麗奈が赴任している西浜学園も今大会は優勝候補の呼び声高く前評判通りの試合内容でベスト8へと勝ち上がった。しかし、貴子が日本タイトル初防衛戦を戦う4日前に横浜スタジアムで開催されたベスト8が運命の分かれ道となった。西浜学園は、ベスト8では、春のセンバツに21世紀枠での出場を果たした公立校の登戸と対戦となり、試合は小笠原寛子の彼氏の石井光良がエースの西浜学園と、春のセンバツの出場校選考で学校のグラウンドが狭い上に専用の練習場もなく、おまけに夜は定時制課程の生徒が校舎を使用する関係から練習時間にも制約がありながら新チーム発足後の秋の県大会ではベスト8まで勝ち上がったことが評価されて甲子園出場となった登戸のエースの小澤昌美との投手戦となった。試合は両エースの投げ合いとなって9回を終了して共に先制点が入らず延長戦となると、11回裏に登戸は先頭打者の俊足の中尾駿がセーフティバントを成功させてサヨナラのランナーとして1塁へと出塁した直後に石井光良とバッテリーを組むキャッチャーの辻康太がマウンドへと歩み寄る一場面があった。だが、登戸の足で揺さぶる機動力作戦は続くこととなり、次の打者の山根浩美の打席の場面で石井光良の投球モーションを見た中尾駿が2塁へと盗塁を仕掛けたためキャッチャーの辻康太は2塁へと送球するも中尾駿の足の方が早く盗塁成功でノーアウト・ランナー2塁となったためバッテリーは山根浩美をフォアボールで歩かせてノーアウト・ランナー1塁2塁として内野ゴロ併殺シフトの守備としましたが、その次の打者の小澤昌美とバッテリーを組むキャッチャーの尾崎圭輔がライト前へとヒットを打つと、2塁ランナーの中尾駿が全速力でホームまで突入。ライトの谷本光がバックホームするも間に合わず中尾駿は生還となり、1-0で登戸が延長11回サヨナラ勝利でベスト4進出となり、光良と光輔の兄弟揃っての甲子園出場の夢は幻に消え、光良の高校生活最後の夏も終わることとなった。一方の大串はベスト8では、過去に三度の甲子園出場経験がありながら公式戦では四度対戦して四度共に大串が勝利している極楽寺と対戦となり、1回に1点を先制されながらも、大串は3回に2点を入れて逆転すると、7回と8回にも2点ずつ追加点を入れて6-1で大串が勝利して、極楽寺との対戦カードでは負けないというジンクスも生かしてベスト4進出となった。試合当日は、寛子は仕事が休みだったことから2試合共に観戦。試合終了後に、寛子は貴子にメールを送信した。



 大串はベスト4進出。甲子園まで残り2勝となった。

 西浜学園は登戸に延長戦まで戦ってサヨナラ負け。私の彼氏は高校生活最後の夏は甲子園には行けずの結果となった。


 ひろこ



とのメッセージだった。メールを受け取った貴子は夏の甲子園神奈川大会のトーナメント表を確認。貴子の母校の大串はベスト4では甲子園出場の常連校で全国制覇の実績もある強豪校の知恩学院との対戦であることを確認した。ちなみに、知恩学院との対戦は、貴子がボクシングを始めた年の夏以来の対戦で、当時は貴子から見て2学年先輩の大和田がエースで知恩学院打線を相手に好投して以来の対戦であることもわかったのだ。

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