男運は遺伝する?
第1話
■ 男運は遺伝する?
九条 AM 11:03
おひさ~
元気してるかー?
久しぶりに時間できたから今日、夕飯でもどお?
私は悩んでいる。
このメールに対して何と返答すればよいのか。
もちろん、私に夜の予定なんてない。自炊はするからスーパー寄って、その後帰って一人晩酌。29歳彼氏ナシの独身女に、この誘いはありがたい気がするが。相手がなぁ…
しかも今日は……
「―――……るき……
突如として私のスマホを掌で遮ったのは、目の前で社食の焼肉定食の焼肉を口の中でもぐもぐと咀嚼している、同期で友人の渡辺
「う、うん!聞いてるよ!トンカツ美味しいよね」
敦美は目を細めると怪訝そうな表情を作り、割りばしを振り回す。
「やっぱ聞いてなかったじゃん。私が言ってるのはトンカツじゃなく婚活」
こ・ん・か・つ ?
別に知らない単語ではない。ただ昼休憩前に入っていたメールの返答にランチに入ったこの時間帯まで悩んでいただけで。
「私たちの状況知ってる?アラサー、彼氏ナシ。貯金なし。もうそろそろヤバイじゃない。一体同期で入った女の社員がどれだけ社内恋愛して退職してったか」
「広報の柳瀬さんでしょ、総務課の伊藤さん、それに経理課の名城さん、あとは―――…」
クソ真面目に思いつく限りの名前を指折り数えていると
「そういう問題じゃない!」
バンっと敦美が社内食堂のテーブルを叩いた。
熱い…熱いぜ。流石名前が敦美なだけあるわ。
敦美が婚活の話をし始めたのはかれこれ二年前にもなる。そこそこ名のある大手の食品会社に入社して五年、若い男性社員が続々と私たちの女性同期や後輩事務員と結婚していく、と言うのを目の当たりにして焦り始めたと言う。
『名のある企業だから、そこそこのスペックの男子と知り合えると思ってたら!ぜーんぜん!いい男は先に売れてくし!このまま一生この会社で働いて老後に怯える自分はイヤ!』って言うのがキッカケだったかな。
それは私も考えたことがある。
私は営業職、敦美はデザイン部門のデザイナー、給料は他の中小企業よりも多いが、毎月どれだけ貯蓄ができるのか、と問われれば雀の涙ほど。
服やコスメ、たまに外食だってしたいし、かといって切り詰めて切り詰めて地味で楽しみもないのもいや。
なんたる我儘。
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