この距離を縮めて
第45話
■この距離を縮めて
またも流されてるって分かりながらも、今度は九条を追い出すことを諦めた。
「え~、ホストさんてそんなに大変なんですね~楽して儲かる仕事かと思ってたらぁ」と九条のホスト時代の話に宝田ちゃんは興味深々、敦美はどこかうっとりと九条を見ているし。あのぅ…敦美サン?目がハートですが…今すぐ眼科に行った方がいいわよ?
でも九条の登場で私がプロポーズされて二人からの質問責めは免れたから、これはこれで良かった…のかなぁ。
てか何気に九条、ふつーに溶け込んでるし。まるで長年付き添ったツレみたいに。まぁ私と九条はそうだけど、二人はほぼ初対面みたいなものなのに。相変わらず場の空気を作るのがうまいな。中学の時から変わんないや。
と言うわけで何だかんだそこから一時間程四人で呑み(何だか変な組み合わせだけど)
「ヤッバ、そろそろ帰らなきゃ」と宝田ちゃんが言い出した。「この歳になってもあんまり帰り遅くなると両親が煩いんです」
意外だな、宝田家。
宝田ちゃんはどうやら実家暮らしで、門限こそないもののやはり日をまたぐと怒られるらしい。過保護、に感じる気がするけれどうちみたいに放任過ぎるのもなぁ。宝田ちゃんは本当に大切に育ててもらったんだ。だから早くいい人見つけて結婚してご両親を安心させたいのだろうか。それはそれでプレッシャーも感じるが。
結婚したい理由って人それぞれなんだね。
宝田ちゃんと敦美は帰る方向が同じと言うことで二人とは駅で別れた。
そして……
「バイバーイ、また会おうね~」と二人に手を振ってる九条は私と離れようとはしない。
「九条、あのさ……もしかしてこのまま私ん家に来るつもりじゃ…?」
「あったり前じゃん。だって全然呑み足りないしー」とそれはそれは当たり前の物言いで私にくっついてくる。
はぁ…
何度目かになるため息を吐き、それでももうここまで来たら諦めた。
結局、九条を家に招き入れることに。
ただし!こないだのように流されてエッチしてしまってはいけない。今日だけは守るぞ!私の操。
ぎゅっと両肩を抱きながら、家に到着してポストを確認すると、やはり数通のダイレクトメールが届いていて、その一番上に封筒に入っていない一枚のA4サイズの白い紙が折りたたまれてあった。
何かの広告かな?
何の疑いもなくその紙を開けると、ボトっと何かが落ちた。それは鈍い光を讃えたカッターナイフの刃で、その白い紙に大きな赤い字で『殺』と、そしてその周りを囲むようにびっしりと黒い小さな文字で『殺す』『殺す』と書かれていた。
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