第46話
声にならない悲鳴を上げて口を覆い、思わずその紙を投げ落とすと九条が
「どした?」と言ってのんびりと紙を拾い上げる。流石の九条もこれにはちょっと驚いたようで、すぐ脇に転がったカッターのナイフを見てちょっと息を呑んだ。
「な、何これ……」
口元を覆ってがくがくと震えていると、ふわりと九条の腕が私の肩に回った。九条はその紙とカッターのナイフを持っていたハンカチで包みながら
「とりあえず、外に居ると危険だから中に入ろう」といつになく真面目に言い私の肩を優しく包み込み、エレベーターへと促す。
こんなとき、いや、こんなときだからこそか、九条のぬくもりに、力強い腕に違う意味で心臓が鳴る。
家に入って改めてその紙とカッターの刃を二人して眺め
「ねぇねぇ、こうゆうのって警察に行った方がいいのかな」と、不安そうに九条の腕を引くと
「いや、現時点で警察は動いてくれねぇよ、もっと被害が拡大すれば別だけどな」と妙に冷静。
「じゃぁどうしろって?このまま怯え続けなきゃならないの」九条の腕をゆさゆさと揺さぶると
「落ち着けって、大丈夫。俺が居るから。最近周りで何かトラブルは?」と冷静に聞かれ私はゆるゆると首を横に振った。
「…そりゃ小さいトラブルは仕事中あるけれど、誰かに恨まれるなんて…」
―――そんなこと考えたくない。私はただ真面目に仕事をしてきただけで。そりゃ知らない所で恨みを買ってることはあるかもしれないけれど。こんなあからさまな殺意を抱かれる程のことをやらかした覚えはない。
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