第42話


コンコンと、扉をノックされ遠慮がちに引き戸が開かれると心配の表情を浮かべた陸ちゃんが



「陽妃ちゃん、大丈夫……?」と顔を出した。



床に蹲っている九条と、仁王立ちになって腕を組んでいる私を見て陸ちゃんは目をまん丸にした。



「あの……えっと…これは……」



はっ!しまった!



「ち、違うの!これにはわけがあって」と何故か必死になって言い訳しようにも何が違うんだー!と自分の中で頭の整理がつかない。



九条がのそりと立ち上がり、






「今日は大人しく帰ってやるよ、



だけどあんたには負けねーよ?おっさん」





九条は陸ちゃんの脇を通り抜けると華奢な陸ちゃんの肩をぽんぽんと叩いて、ポケットに手を突っ込んで店を出て行った。



な、何なんだーーー!あれは!



嫌がらせか?うん、間違いなく嫌がらせだろうな。私が一人幸せ(?)になろうとしてるのが悔しいんだ。



「ごめんね陸ちゃん」何に対して謝ったのか分からない。けれど私は何故か謝った。



「いや、いいけど……実は…この扉摺りガラスになってて、君たちのシルエット全部見えてたんだよね……」



え!?



ってことは私が九条に膝蹴りしたことも!



席に戻ると、男性陣たちは若干顔をひくつかせて二人で何やらこそこそ。



嗚呼、サイアク。



九条の登場で一気に場の雰囲気が盛り下がり(言うまでもなく私が盛り下げたんだけどね)その後はぎこちない会話を一生懸命繋ぐ感じになり、宝田ちゃんだけが色々気を遣っていたけれど、完全に場がしらけていた。



席の予約時間は二時間と言うことだったけれどそれより早くに誰かが帰りを切り出し、うやむやな形で合コンは終わってしまった。



二次会の話も出ずに見事に男性陣と女性陣が店の前で別れ



「敦美!ほんっとぉに!ごめんっ!!」敦美に謝ると



「ホントですよぉ、先輩のせいで台無しぃ」と宝田ちゃんが唇を尖らせる。



「いや、合コンセッティングしてくれた陽妃には感謝だよ。もういい歳した大人なんだからさ、その辺は自分たちの責任って言うか」



敦美~~~!



涙ぐんで敦美にギュッとハグをしていると、反対側に向かっていった男性陣たちの群れから離れて一人陸ちゃんが走ってきた。



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