第41話


喫煙ルームに九条を押し込むと、バンっ!と音を立てて派手に壁ドンした―――のは私の方。



「どういうつもり?」



精一杯の威嚇で九条を睨むも、こいつには全然堪えてないみたいでマイペースにジャケットの内ポケットからタバコの箱を取り出す。



「そんなイライラすんなよ、ヤニ切れ?一本吸うか?」



能天気に笑って九条はタバコの箱をこちらに向けてきて



「吸わない、てかもう辞めて何年になると思うの」



何故だか無性に腹が立った。



こんなことさえ―――知らない男なのに。



こんなクダラナイ男に体を許した自分に―――腹が立った。



クダラナイのに、完全に拒絶できない私も悪い。



「お前、例のゲームしてるだろ?」唐突に聞かれて、置き去りにしてきたバッグの中のスマホの存在を思い浮かべる。



「あれさー、オンラインにしてるとプレイヤーの位置情報が分かるんだよねー、最初は必要あんのか?と思ったけど、これが結構便利でさー、姫たちにインストールさせて偶然を装ったり、避けたりもできるんだよなぁ」



あ……あのゲーム!そう言えば画面を閉じただけでオフラインにしてなかった。ってことはその位置情報を見て九条はここまでたどり着けたってわけ?



てか



「あんたってやっぱクズ」



知ってはいたけどね、今更、な気がしたけどね、



「誉め言葉だと思って受け取るよ」と九条はどこまでも余裕の顔。



「だ・れ・が!褒めてなんかねーよ!」



ガシっ!



私は九条の両肩を掴むと、こいつの鳩尾に一発膝蹴りを決めてやった。



「ぅ゛!」と小さく呻いて九条が腰を折り、その場で屈むと涙目になりながら私を見上げる。



「相変わらずの”あんよ”だな」



「これ以上痛い目に遭いたくなかったら今すぐこの場から消えな」



手の指の関節をポキポキ鳴らすと、九条は両手をそろりとあげた。



「分かった、痛い目みたくねぇから帰るわ。とりあえず俺の目的は果たせたし」



「何の目的があった」私が睨むと






「お前の彼氏面」






は――――?



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