第40話


偶然…?



なワケあるか!もしかして会社から尾けてきた?



「えーっと……陽妃ちゃんの知り合い?」陸ちゃんが目をぱちぱちさせて私の意見を仰ぐ。



「”陽妃ちゃん”?随分馴れ馴れしいなおっさん」と九条の小さな言葉は聞こえなかった気がする……いや、聞こえたけどとりあえずはスルー。



知り合いじゃアリマセン、赤の他人デス



と、顔を逸らしたくなったけど



「ふーん、合コンって言ってたんはホントだったんだな」と九条は飄々とした笑顔でメンバーを見渡し、見られた男性は肩をびくうと震わせ九条を見上げている。



「あ!こないだ先輩を迎えに来てた!」と宝田ちゃんがいち早く反応した。



「迎え?」陸ちゃんの眉がぴくりと動き



た、宝田ちゃんそれ以上は言わないで!何か言われる前にちゃんと誤解を解いとかなきゃ。



「あー、えっと…中学の同級生で腐れ縁的な?」ともう何度も説明している言葉で紹介すると



「ひっでぇな仁科、俺たちそれだけの関係じゃないだろ?」頭の後ろに手をやり僅かに首をかしげる九条の口元は妖しい笑みが浮かんでいた。



た、確かに……もう私たちの関係はただの幼馴染的な意味合いではなく、悪い意味で言ってしまうと『セックスフレンド』って言う程してないけど。



「ね、ねぇ、この彼って”例”のホストの?」と敦美がこそっと耳打ちしてきて、私はぶんぶん首を縦に振った。この際だから敦美にも協力してもらって九条を追い出すしかない。



「ヤバっ、顔面偏差値超高くない!」



「顔面だけなら、ね」



これ以上九条の口から何かを語らせまい、として私は席を立った。



「く、九条ちょっとこっち、タバコでも吸いに行こ?」と私は店の奥にある喫煙ルームを目配せ。



「あれ?陽妃ってタバコ吸ってったっけ」



あー!もぉ敦美ぃ!



全く使い物にならない敦美を恨みがましく目で一瞥して九条の腕を掴むと



「わー、そうやって並んでるとすっごくお似合いの二人ですね~美男美女?」とこれまた空気を読めないのか、或いは他の男を取られたくない作戦なのか宝田ちゃんがふわふわと笑う。



「陸ちゃんごめん、ちょっと席外すね」慌てて言い、九条を喫煙ルームに引っ張っていく。



「痛っ、仁科力強いって」とブツブツ垂らしながらも九条は大人しくついてくる。



とりあえずはほっ。でもどうやってこいつを返そう。



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