第39話
席にはすでに横一列で陸ちゃん以外の男性が二人座っていた。大学の准教授か秘書を誘うって言ってたからもっとお堅い人たちを想像していたけれど、年齢は私たちよりちょっと上の、カジュアルでありながら清潔感のある人たちを見て、ちょっとほっ。
一旦は敦美も宝田ちゃんも満足してくれそうだ。
「こんばんは~遅くなってすみませぇん」と宝田ちゃんが、サっと一番奥の……この中でも一番年齢が若めの男性の前に座る。宝田ちゃんの前の男性は爽やかな笑顔で「大丈夫ですよ」と受け答えもスマート。
すでに戦闘モードか?彼女の行動に顔をひくつかせながらも敦美がすぐに宝田ちゃんの横に腰かけ、結局私は陸ちゃんの前になった。
う゛……他に人が居るとは言え、このフォーメーションやり辛い……
それぞれのドリンクを注文して、恒例の自己紹介。陸ちゃんのおツレさんは二人とも陸ちゃん付きの秘書で年齢は思った通り35歳と31歳。
合コン独特の妙なよそよそしさや若干の緊張を感じてはいるが、数種類のおつまみや料理を注文しているうちは、わいわいと楽しかった。
「え~!秘書さんってそんなこともするんですかぁ?すごぉい」と甘々の声と仕草で彼らの仕事に興味深々なのは宝田ちゃん。声のトーンが1トーンも2トーンも上がっている。砂糖でできてるのか?ってぐらい甘ったるい。
そして……
「ん♪これおいし~!前田さんもどぉぞぉ」
出た!必殺宝田あざと技!前田と呼ばれたその人にフォークで刺したチーズを口の前であーん。そのあざと技ですでにKOされ気味な男性二人は熱心に宝田ちゃんに仕事についてのことを話し聞かせている。
隣に座った敦美が、スカートの上でぎゅっと拳を握っていた。
こ、怖い……
いつもは恋愛に関して少し貪欲過ぎるほどの敦美が宝田ちゃんの前で押され気味だ。
このままじゃダメだ。敦美の為にセッティングしたのに。
「あ、あの……!」と切り出したときだった。
「よーぅ、仁科ぁ。ぐ・う・ぜ・ん?」
白いタートルニットに黒いジャケット、黒いパンツのセットアップ姿は相変わらずシンプルだけど最大限、”こいつ”の魅力を引き出してるって言うか……って感心するとこじゃない!
な、何で居る!?
九条っ!
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