第24話


結局、短いランチはあっという間に過ぎ、本来喋りたかったことの三分の一も喋られず、しかし時間には勝てない。と言うことで私たちは会社に帰ることになった。



個別にお会計をしているとき



「あれ?あそこに経理の斎藤さんが…」



敦美が誰にも聞こえない程度にこそっと私に耳打ちして、店の隅の方で食事をしている地味な女性を目配せ。



あ、ホントだ…



グレーのニットカーデに白いシャツ、枠無し眼鏡の相変わらず地味な姿。敦美に言われなかったら気づかなかった。



割とキラキラ系女子が多くきっとSNSに写真をあげるのだろう写真を撮るのに忙しそうにしている中、その姿は逆に違和感って言うか浮いてるって言うか……



あの斎藤さんでもこういう所来るんだ…



「ねね、さっきの話聞かれたかな」私は敦美の袖を引っ張って眉を寄せた。



「さぁ?でも知られたところで痛くもかゆくもないでしょ。だってあの人とうちらと接点ないし。大体あの人と仲良い社員ているの?言いふらす相手もいないんじゃない」と、事情を知らない敦美がけんもほろろに言う。



そう……かもしれないけど。



だって斎藤さん、前に九条と手を繋いで街を歩いてたんだよ?



斎藤さんは私たちの方を見てなかった。ただもくもくと食事を続けている。



でもその姿が、ランチを楽しんでキャイキャイしている女子たちの中、やけに浮いて見えた。



午後も引き続き、と言うかほぼ毎日、月曜日~金曜日まで仕事してるとそれは生活の一部として当たり前のようにやっつけ感と言うか、良いこともあれば悪いこともある。どっちかと言うとトラブルの方が多い気がするがやりがいはある。そう、何だかんだ私はこの仕事が嫌いじゃない。



何かやらかして左遷でもされない限り、定年を迎える。これが一番だ。結婚して男に頼る時代はもう終わったのだ。



し・か・し



『ねー聞いたぁ?仁科さんホストに何千万と貢いで捨てられたらしいよ~?』


『私は借金があるって聞いた』



何か……やらかしてもないのに、噂話が一々気になるぅ!!



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