第23話


「って言うかあいつとは付き合うとかそんなんじゃないから、ほら、よくあるワンナイト的な?流されて~とか、ほだされて~とか」



色んな理由をつけてもシてしまったものはシてしまったのだ。



「じゃぁ陽妃はその彼と結婚する気はないんだ」



け・っ・こ・ん!!?



私はぶんぶん首を横に振った。



「無理でしょ!相手はホスト……ても元だけど。女性を食いもんにしてるんだよ。そんなヤツと結婚とかありえないでしょ」



「いいじゃん、今は経営の方でしょ?現役ならちょっと考えもんだけど」



「良くない!そもそも私は絶対結婚したいわけじゃないんだから」



そう言い放つと敦美は分かりやすく「はぁ」と大きくため息を吐き



「そりゃ陽妃は誰が見ても美人だし、気が利くし、仕事デキるし?今はいいかもしれないけれど、ちやほやされるのは今だけの話なんだよ」



今だけ?



「今でももう十分賞味期限切れなの。分かる?この現実。いつまでも結婚はしないって言い張って、後で後悔したって遅いんだから」



敦美はフォークを私に突き付けてきて、突き付けられた私はフォークの先を見つめ寄り目。



後悔……かぁ。



いや、でも相手はあの・・九条だよ。結婚はおろか付き合うなんてこと、ヤツは望んでない筈。



「昨日の”アレ”は偶然、アクシデント、手近で手を打った。そんな所だよ」



「あのねぇ、15年間付き合ってて手近で手を打つってことある?その気になれば他にいくらでも女はいるでしょ」



よく喋る敦美の口は喋るペースと食べるペースが一緒で、見る見るうちにラザニアが消えていった。



同じメニューを頼んだ私のラザニアはすっかり冷めてしまって、薄く伸ばしたパスタ生地は固くなっている。それをフォークでつつきながら今朝の九条の言葉を頭の中で再生する。







『彼女面、していーんじゃねぇの?』





あれは、どういう意味なんだろう。



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