第31話


家に辿り着き、ポストの中を覗くと今朝九条に渡した合鍵が出てきた。良かった、今もまだ居座ってたらどうしようかと思ってたけど、流石にあいつも今日は仕事よね。



合鍵と数通のダイレクトメールに交じってオフホワイトの封筒があった。



宛先は”仁科 陽妃 様”ときれいな毛筆体で書かれている。差出人を見るつもりでひっくり返したら



嵯峨野 晃さがの あきら

大谷 朱理おおたに あかり



と、連名になっていて



これって……もしかして!



急いで部屋に入るとコートを脱ぐのももどかしく、しかし封筒の封を開ける手は慎重になって、丁寧に中を取り出すと…



これはっ!!






「もしもし朱里!?久しぶり~!」



『陽妃~!久しぶり~!もしかして結婚式の招待状届いた?』と中学から少しだけ大人びた声の親友の声を聞いて今にも涙が出そうになった。朱里とは中学のときの親友だけど、最近ではお互い仕事の関係で年に一回ぐらいしか会えてない。中学の時から嵯峨野くんと付き合ってたのは知ってたけど前回会ったとき、朱里の口から結婚の”け”の字も聞かなかったのに。



「おめでとう!とうとう嵯峨野くんとゴールインだね」



そう、朱里は中学の親友、嵯峨野くんは元クラスメイトで委員長も一緒にした。嵯峨野くんに告白されたけれど、結局断った。その後朱里と付き合うって話を聞いたときは自分のことのように嬉しかった。二人とも大好きだったから。



「中学からずっと続いてたんだね~、でももっと早くても良かったんじゃない?」茶化して言うと



『んー、私は仕事も好きだしもう少し後でも良かったんだけど、事情があって』



じじょー??



『その……でき……ちゃったんだ』



Wow!!



「それは二重におめでたいじゃん!ホントにホントにおめでと~!」



朱里は中学から夢見てたウェディングプランナーと言う職を手に入れバリバリ働いてたから、職を離れるのはちょっと寂しいかもしれないけど、でもこうゆうのってタイミングも大事だしね。



『ありがと…なんか陽妃に言われると照れ臭いな』と朱里は電話の向こうではにかんだ。



そっか…そっかー!!うんうん、それは結婚しないとね!一人頷いていると



『陽妃は?九条くんとまだ続いてるの?』突如として出された言葉に私は喉を詰まらせた。



「九条とは……うん、たまに呑むぐらいかな。進展はない。ってか今更ねー、うちらもう中学のときと違うし」






『そっか……私は二人お似合いだと思ったんだけどなー、



九条くんにフラれたとき、九条くんにね、陽妃が好きって言われたんだよね』






は――――?




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