第59話


九条!?



何で!?こんな所に?



慌ててスマホを確認するも、今は九条と使っていたゲームアプリは起動していない。



てことは偶然?



でも、ここホテルだよ。ロビーの上の階は客室だよ。



私のことが心配だとか言ってたくせに、ちゃっかり違う女ともデートかよ!いいご身分だな!(しかも美人!)



「ちょっ!陸ちゃん、出よう!」



私は慌てて伝票をひったくり、陸ちゃんの腕を引いて「え…!え…?」と訳も分からない陸ちゃんが慌てて後をついてくる。



ホテルって言うのは何でこうなのかな。ゆったりしたムードは雰囲気作りにいいけど、ウェイターのお会計も優雅なもので急いでいる私は万札だけをカウンターに突き付け、九条が今まさに明らかに年上だと思われる美人とエレベーターに入っていく姿を凝視。



ああ、入っていっちゃう。



「陸ちゃん、おつりもらっておいて!」それだけ言うと私はエレベーターの方に走り寄った。勿論、九条と見知らぬ美人には気づかれない程度に。彼らを乗せたエレベーターの昇っていく電工表示を睨んでいると最上階の45階で止まった。昇降パネルの横にフロアガイドの掲示があり、45階はスカイラウンジになっているみたいだ。



バー?



それも45階だからさぞかし眺めがいいだろう。私を放っておいて自分は美人ときれいな夜景を見ながら『君の瞳にカンパイ』てか?



九条の言葉を一瞬でも信じた私がバカだった。






―――『九条くんにね、陽妃が好きって言われたんだよね』



―――『お前の彼氏面』



―――『お前の全てが欲しい』




あれは、全部嘘だったんだ。



やっぱりね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る