嵐の前触れ
第35話
■嵐の前触れ
残ったお昼休みの時間に陸ちゃんに連絡を入れると、すぐに人数と日程を調整してくれると言う。
ありがたいことで。
しかも定時を迎えるちょっと前にメールが入ってきて、合コンの日程は一週間後にどうか、と言う返事もあった。
仕事早いなー……どっちかって言うとそう言うこと疎そうなのに。それとも陸ちゃんの周りにもやっぱり結婚に焦っている男性が多いってこと?ま、いっか……少数でも二人きりじゃなくて。会って食事して飲んで……その後のことはまた考えよう。
仕事のことになると早めの行動ができるのに、どうやら私はプライベート…こと恋愛に関しては後回しにしてしまうらしい。
と言うわけで合コンの日取りはあっという間にまとまった。
それから約束の一週間、二三日前の嵐のような出来事はどうした!?って言うぐらい平穏とした日々を過ごせた。
一週間、九条とは電話はおろかメールもしていない。陸ちゃんとは合コン場所や時間の…これまた業務連絡のような内容のそっけないやり取りだけで、二人ともひっそりとなりをひそめていた。
このまま、何事も無かったように時が過ぎてくれれば…
と思ったものの、これはこれから起こる本格的な嵐の前触れでしかなかった。―――と言うことを知るのはまだ先の話。
一週間、問題の二人からは連絡が途切れがちだったものの、代わりに宝田ちゃん(最早ちゃん付け)がまるで子犬のようにまとわりついてきて、私は気にしてないけれど敦美はどこか不機嫌そうで、何故か私が敦美の機嫌取りみたいなことをして、逆に疲れたが。
これも合コンが終われば治まるだろう、と楽観視していた。
この日も私と敦美、宝田ちゃんは当然のように外食ランチにくっついてきて、社に戻るときロビーは黒い上下スーツの男女が何人もうろうろとしていた。そのスーツの団体は年齢も性別も様々だったが、どこか顔つきが厳しく
「何だか物々しいね」と敦美に問いかけると
「そう言えばぁ、今日内部監査が入るとかどうとか先輩が言ってましたぁ」と宝田ちゃんが小首をかしげながらのんびり。
「内部監査ぁ!!」私は目を広げた。「それを早く言ってよ!」
マズイ……マズイマズイ!
『内部監査』と言うのは我が社だと年に二回入る。ただし次期は未定。けれど、監査が入る三日~一週間の間に入る旨の情報は回ってくる。だから入る日に備えて処分しなければいけない書類は処分するし、個人情報等の重要データは全て鍵の掛かる引き出しか、ロッカーに入れるのが正しい。抜き打ちの場合、大抵理由は『不正会計などが強く疑われる部門』などに関して行われることが多くなる。
勘違いしないで欲しいが、私は不正会計など一切していないのであしからず。
それでも鍵付きのロッカーに入れてない書類に思い当たるフシもある。
「ごめん!二人とも、私行くね!」と、パンプスのヒールを乱暴に鳴らして私は走り出した。
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