私を合コンに連れてって

第29話


■私を合コンに連れてって



ママと喋ってても埒が明かない。早々に諦めて



「とにかく状況は分かった。今すぐには返事ができないけど前向きに考えてみる」と言う適当な言い訳で電話を切ろうとしたら



『ちゃんと考えなさいよ?女は歳を取れば取るほど結婚が難しくなってくるのよ』



ママも、敦美と同じことを―――



何で……何で。そっとしておいてくれないのかな。



九条のことは好き。



だけどそれ以上の関係に発展することはないだろう。だったらせめて一生片思いで良い。



陸ちゃんのことも好き。



だけどその気持ちは恋愛とは違って、ただ”好き”じゃだめなのだろうか。





スマホを持って力なく帰っていこうとしたら、一人残った陸ちゃんは私よりちょっと年上の女性二人に声を掛けられてて……



ん!?



すぐに近づいてけず、ちょっとの間見守っていると陸ちゃんは私の空席になった席を指さし、苦笑いで何かを女性たちに話しかけ、女性たちはさも残念そうに帰って行った。



あれって逆ナン!てヤツ!?初めて見たよ!



”あの”陸ちゃんが!?って失礼か…



そろりと席に戻ると私を見て陸ちゃんは少し心配そうに眉を寄せ



「どうしたの?具合悪い?酔った?」と気遣ってくれる。



優しい―――人なんだよな。柔和で大人な落ち着いた笑顔とか、真剣に心配してくれてる表情とか、好きだよ?安心もするよ?



かと言っていきなり結婚相手としてシフトできないよ。いっそのこと脳内にシフトレバーがあれば楽なのに。



「いきなり結婚話してごめん……、ちょっとびっくりしたよね。返事は急がないから前向きに…」



陸ちゃんが居心地悪そうにワインをガブリと呑んだ。



陸ちゃん……お酒弱いくせに、無理してるんだろうな……



私は卑怯だ。



卑怯で臆病者。



陸ちゃんがどんな答えを望んでいるのか分かり切っている筈なのに、それに応えるYESも、きっぱりと拒絶するNOも言えない。



「あ、あのさ、敦美がさ……ほら、たまに話すでしょ?同期の一番仲いい」



「うん、覚えてるよ。敦美さんがどうしたの」



「あ、あのね。すっごく真剣に婚活してて陸ちゃんに友達とか誰か紹介してくれないかって」



私の言葉を聞いた陸ちゃんは目をぱちぱちさせ、やがて小さく笑った。



私は―――この控えめな笑顔も好きなんだ。



私がNOって返事を出したらきっと陸ちゃんともこうして会うこともないだろう。



そんなの、ヤダ。



ああ、私ってどこまでも我儘。



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