第27話


いや…



いやいやいや、いやいや、陸ちゃん。



何やってんの陸ちゃん。



開いた口が塞がらない、とはこのことを言うのだろうか。



昨夜、九条と致してしまったって言う状況下、今日陸ちゃんからまさかのプロポーズ!?



これは…モテ期に入ったってこと??



いやいや、違うだろ。



「あのぅ、一つ伺いたいのですがー」そっと手をあげると



「…ど、どうぞ」と陸ちゃんも緊張気味に応える。



「私たち、付き合ってた?」



私の言葉に陸ちゃんは普段は研究疲れで青白い顔をしているのに(そのやつれた感が影がある大人でかっこいいと評判だと聞きかじったのはママ経由)、今回ばかりは顔を真っ赤にさせて



「いや、付き合ってはない」



と一言。



「あ、あのさ、物事には順序ってのがあるよね。例えば結婚の前にお付き合いとか、同棲とか」



「分かってる……分かってるんだ……でも、君のお母さんに君が30を超えたとき、誰もいい人が居なかったらお嫁に貰ってやってくれって」



ママ!!何勝手なこと言ってンのよ!



「これはその……プロポーズの意味もあるし、あ…!お誕生日おめでとう、って意味もあって……てか会って最初に言うべきだったよね、おめでとうって」



陸ちゃんはいかにも場慣れしていない感じでしどろもどろ。



陸ちゃんの見た目割とかっこいいイケオジなのにこうゆう擦れてないところ、好きだよ?ギャップって言うのかな……好きだけど、種類が違うって言うか。



父親みたいな…って言うと歳が近い気がするけど、歳の離れたお兄さん的な?



「ちょ……!ちょっとごめん、私お手洗い」



―――結局、逃げて、きてしまった。



女性お手洗いの個室が二つ。その一つの扉をバタンと閉め、私は扉に背を押し付け未だバクバク言ってる心臓を何とか宥めようと胸に手を当てた。



”あの”真面目一筋の陸ちゃんが!?



私を好きだったって言うの!いつから!?



って考えてる場合じゃない。確認しなきゃ。



握りしめてきたスマホで慌ててママに電話。時間が時間だからママも仕事中かもしれないけれど、この緊急事態に相手の立場を思いやる余裕なんてない。



『もしもし?陽妃~?お誕生日おめでとう』



「うん、ありがと……



って!そーじゃなーい!!てか私の誕生日昨日!」



『あら、そうだったわ。ごめんね~』カラカラと能天気に笑う母に頭が爆発しそうになるのを抑える。



「ママ、陸ちゃんに私が30になっても彼氏や旦那が居なかったら嫁にもらってくれって言ったのホント!?」



『あら、そんなこと言ったようなないような…でも陸ちゃん記憶力はいいしね、たぶん言ったんだろうね』



ママ!!!!



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