第2話
そんなわけで敦美は早々とマッチングアプリなるものを登録したのが、一年前。けれど話に聞く限りうまく行ったケースを聞かない。
『いい人だと思ったんだよ、思ったんだけどねー、この顔盛り過ぎじゃない!』とアプリのアイコンと実際の写真を比べられたときは言葉に詰まった。そもそもマッチングアプリとはそういうものじゃないか。私はやったことないけど、敦美もかなり画像加工してるからどっちもどっちな気もするが?
『しかも年収1,000万とか書いてあったけどそれも嘘で、こないだ偶然入った居酒屋でバイトしてたの、そいつ!』
あー、あるある。経歴詐欺ってるの。
何故私がマッチングアプリに詳しいのか?それは私自身が経験したことではなく、私の現在の悩みの種である”
と、まぁマッチングアプリの婚活に苦戦している敦美は
「ねぇ経理の
突如として名前を出されて私は脳内の社内データを頭の中でぐるぐる。
「ああ……あの大人しめの」とは言ったものの、”大人しめ”はかななりオブラートに包んだ言い方。はっきり言って地味で年齢は50を少し過ぎたぐらいの冴えないおばさん、て感じかな。嗚呼、私もこのまま行けば斎藤さんコースなのかな。
「あの人、かなりの貯金があるらしいよ。何かー、マンション買うとか高いペットを飼ってるとか。あそこまで行くと結婚願望すらなくなるのかね~」
敦美は頬杖をついて、興味があるのなないのかぼんやりと視線を宙に彷徨わせている。
マンション買った?ペット飼ってる?
「…………」
私は無言でトンカツ定食のトンカツを口に入れる。
だって知ってるもん、私。斎藤さんが―――この問題のメールを寄越した相手、”九条”と腕を組んで歓楽街を歩いているのを、見たもん。
たまたま偶然発見したものの、顔見知りの九条に声を掛けることもできず逃げるように帰ったわね。
えらいもんを見てしまった。
”あの”斎藤さんが!?
”あの”チャラい九条と!?
帰って速攻九条にメールしたっけ。
”あんた斎藤さんのことを食いもんにしようとしてるわけ!?”
”斎藤さん?て誰”飄々と言ってきた九条に苦情の(←ダジャレ?)追加メールを送り付けてやる。
”うちの経理部の斎藤さん。さっき一緒に歩いてたでしょう。グレーのコートに黒いスカートでボブカットの”
”ああ、あの人上の名前サイトーさんていうの?下の名前しか知らなかった。確か
知らねぇーっつの!!
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