第3話
「
身の程を知れっつーの!」
ガンっ!と音を立ててお冷の入ったグラスをテーブルに叩きつける敦美の迫力は結構なもので
「あー……うん、流石に29の男に50オーバーのおばさんがね…」
と言うと
「は?何それ」
「え、違うの?」
「陽妃、本当に私の話聞いてないんだね、どうしちゃったのよ今日。私が言ってるのはあの総務課の
と敦美はここからちょっと離れた場所に視線を向け、確かに私と同じ課の青山くんと総務課の宝田さんが談笑しながらランチをとっている。しかも宝田さん、食べるものもあざといな。いかにも女子が好みそうなオムライスとか。
何となくそっちに目を向けると
「もー、やだぁ青山さんたらぁ」と笑いながら青山くんの腕をさりげなくボディータッチ。
おお!確かにあざといな!
「男はなーんでああゆうタイプにいくかなぁ、見てよあの宝田の服」
敦美に言われ、私は宝田さんの今日の服装をちらりと盗み見。ベリー色の五分丈ニットには肩にオシャレにリボンが配置されていて、くるぶしまでのふわりとしたスカートは白地に同じくベリー色の大柄な花模様が散らばっている。
ふつーに可愛いじゃん。似合ってるじゃん。
宝田さんは入社して二年だから確か24の筈。彼女より5歳も年上の私たちには到底着こなせない服だな。いや、私があの年齢でも着こなせないけど。
「ああゆうの、勝ち組って言うのかな~、絶対SNSでキラキラ投稿……てかさっきも写真撮ってたから、てかたかだか社食だよ!あれ絶対青山くんの存在チラつかせて匂わせるに違いないよ、ホントあざとい」
”勝ち組”―――ってここ数年敦美は言うけど、私には何が勝ち組で何が負け組なのか分かんない。
だって自分の人生が充実していれば、例え結婚してなくても家庭持ってなくても勝ちじゃない?
「そう言えばさー変な噂聞いたことあるんだけど」
突如として会話が変わるのは何も敦美だけじゃない。女はいくつになってもそのスキルが身についているから凄い。まぁかく言う私も戸籍上でも生物学的にも女には違いないが。
「あそこの営業課の青山くんとあんたがデートしたとか、しないとか」
ブー…!
お冷を口に入れていた私は危うく吹き出しそうになった。
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