第55話
疑いたくないよ。
だってあの陸ちゃんだよ?
あの虫も殺せそうじゃない陸ちゃんが―――?
結局この日三人で話し合っても当然結論は出ず。
それから私は三日間程、誰とも分からない手紙の送り主の犯人の姿に怯えつつ、日常を過ごした。九条は手を打つとは言ってくれたけれど一体何をしてくれたのか、連絡しようにも盗聴や盗撮されてたら、と別の恐怖がまさってそれすらもできなかった。しかしその不安とは裏腹に脅迫状らしきものはあれ以来届いていない。
そんなある日、早朝に陸ちゃんからメールがあった。
おはよ、今日ちょっと夜時間が出来たんだ。軽い感じで呑みに行かない?
本当に軽い感じ、で。”あの”返事のことを催促したいわけじゃないから
大本命の陸ちゃんからメールがあり、九条に相談するべきか悩んだけれど、犯人が陸ちゃんなら私はちゃんと向き合わなければならない。それは九条の手を借りるべきことではない。
ちゃんとしなきゃ。
私は自分から指定した高級ホテルのラウンジで会える旨を返事した。ホテルだったら客以外たくさんのホテルマンたちや警備員がいる。お酒を飲むつもりはなく『コーヒーだけなら』とも伝えた。陸ちゃんは特別不思議がったフシもなくすぐにOKの返事がきた。
と言うわけで、私は例のごとく……てか最近会議室化してない?社食で敦美と宝田ちゃんに報告。
私に万が一のことがあったら……あってほしくないけれど、すぐに警察に通報して欲しいことを言うと
「そんな危険なこと」と当然敦美は猛反対してきた。
「あのひと、そんなことするタイプには思えないですけどぉ」と宝田ちゃんはのんびり。
「人は見かけに寄らないって言うじゃない。それにああゆう真面目なタイプが一番危険なのよ」と敦美が宝田ちゃんを睨む。瞳の中で『そんな不謹慎で能天気なこと言わないで』と訴えていて、宝田ちゃんは居心地悪そうに肩をすくめ
「そう言えばぁ」と話を逸らすつもりらしい。
「こないだ内部監査入ったじゃないですかぁ」
「ん?うん、そうだったね」結局、青山くん
「何かぁ、経理部で不正があったとかぁ」
それも青山くんからちらりと聞いた。横領がどうのこうの、とか。
「経理部の斎藤さんて知ってますぅ?彼女が不正に経理システムにアクセスしてお金を横領してたとか」
は――――?
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