34_封じられた記憶

 メキメキ。


 細胞一つ一つの繊維が、一気に切り裂かれるような音を鳴り響かせ、ダンテの振った斧は不死鳥の大木に気持ちいいくらいにさっと深く食い込んで行った。


 そのまま、ダンテの斧になすすべもなく大木は見事に上下真っ二つに断ち切られた。


 真っ二つになった大木は、生命を断ち切られ光粒子となって消えて行く。周りを飛んでいた不死鳥たちもまた心臓部を破壊されたことで共に光粒子となって消滅する。

 

 その直後、カリンの補助魔法の効果が切れ、ダンテの身体から神々しい光が失われる。大木を断ち切るまで彼女の補助魔法の効果が持続していてくれたのは幸運だった。


 ダンテはカリンの方を見ると安堵の表情を浮かべ言った。


「どうやら、終わったみたいだ。カリンのおかげだ」


 ダンテはカリンに感謝の気持ちを伝える。


「おじさんの役に立ててよかった!見て、奥の扉が開き始めた!」


 カリンは奥の方で開く荘厳な扉を指さした。カリンとともにダンデは扉が開く様子を見ていると、左腕のメイテツの声が、ダンテの脳裏にツンと響いた。


「ダンテ、あの扉の向こうから私の力を感じる」


 メイテツは、ずっと神殿のどこかから自分の力を感じていたが、どこにあるかまでは明瞭としていなかった。奥へ進む扉が開かれたことにより、奥側に自らの力が眠っていることを今なら確信できた。

 

「メイテツ、君の記憶と力が扉の向こう側に……。行ってみよう」


 さっそく、カリンと一緒にダンテは扉の奥へと向かった。扉をくぐると、光の玉のようなものがふわりと浮いている。


「この光の玉が、メイテツの力と記憶」


 目の前で浮いている玉からは神秘的な力を感じた。神殿からも漂っていたピュアの力だ。この光の玉がその大元だったらしい。


 触れればいいのだろうか。


 恐る恐るダンテは光の玉に近づき左腕で触れてみる。すると、光の玉が粒子状になりメイテツの黒いボディに流れ込んでいく。


「ひ、光の玉が流れ込んでくる!?メイテツ、大丈夫か?」


 光の玉が急に流れ込んできて、心の準備ができていなかったダンテは当惑する。


「……」


 ダンテの問いかけに対してメイテツからの返事がない。


「メイテツ!」


 いつもなら直ぐに返ってくるはずのメイテツの返事がなく、ダンテは彼女のことを心配する。


 少しの沈黙の後、メイテツの声が聞こえた。


「思い出した……。私は、魔物に育てられたんだ」


 メイテツは、光の玉に封じられていた記憶を取り戻し、失われていた過去の記憶の断片が蘇っていた。メイテツの口から告げられる意外な言葉にダンテは唖然とする。


「魔物に育てられた……どういうことなんだ、それ」

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