29_緑の魔物

 緑の神殿に足を踏み入れるやいなや、ダンテは前方からの風を感じる。神殿の中は、長い廊下のようになっており、奥の方まで一本道がずっと続いている。


 この道の先はどうなってるんだ。


 立ち止まり、目を細め奥の方を見る。だが、まだまだ距離があるのか、道の先がどうなっているのか確認できない。


「この神殿の中ってこんな感じになってたんだね」


 道の先を立ち止まり見ていると、カリンがごく当然のように、話しかけてきてダンテは、びっくりする。


「か、カリン!?一緒に入ってきてたのか。ここは危ない。外に出てたほうがいい」


 白の神殿と同じなら、この神殿もまた試練が待ち受けている。命の危険を伴う試練だ。そんなことに、カリンを巻き込みたくないという気持ちが彼にはあった。


「おじさんと一緒にいたいの。一人は嫌だから。それに、私も役に立てるわ。回復魔法と補助魔法なら使えるし」


 カリンは、ダンテの服を掴み頼み込むように言った。


「分かったよ。ただし、命の危険を感じたら、俺を置いて逃げるんだぞ」


 カリンの頼みに、やむを得ず、ダンテは妥協し二人で神殿の奥へと進んだ。


 しばらく、進むと大きく開けた場所に出た。真ん中には大きな大木があり、どこからか真っ白な光が斜めに差し込んでいる。


「とても幻想的」


 カリンが、神殿の中の様子を見て感想を漏らす。


「ああ、綺麗な場所だ」


 ダンテもまた、目の前の光景に同様の感想を抱く。


 この場所のどこかにメイテツの記憶と力が眠っているはずだ。


 ダンテは、真ん中の大木の方を注意深く見ているとさっと風が吹き抜けて、葉がひらりと宙を舞う。


 ダンテ、私の力を感じる。


 左腕のメイテツの声が、ダンテの頭に響く。


 すると、真ん中に見える大木の一部がぐねぐねと蠢くと、ある動物の姿へと変貌していき産み落とされる。


 産み落とされたそれは、背中から生えた巨大な両翼を羽ばたかせて飛翔する。


「あ、あれって、もしかして……」


 カリンは、驚愕な表情を浮かべ、大木の真上を飛んでいる動物を見た。その動物は、彼女でも知っている伝説上の生き物だ。


 1000年前の世界から来たダンテもまた、その動物を本でしか見たことがなかった。


 ただの物語の中の空想の生物。


 彼は今の今までそう思っていた。だが、目の前に現れたことで、空想は現実となる。


「あれは不死鳥だ。また、骨が折れそうだ」

 

 不死鳥の神々しい姿に、ダンテは反射的に左腕を剣の形に変えて戦闘態勢に入っていた。


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