28_緑の神殿
心地いい。なんだ、この感覚は……。体に温かい何かが流れ込んでくる。傷口が塞がっていく。
意識を失った暗闇の中、ダンテは妙な心地良さを感じていた。
次第に、暗闇は晴れていき白い光に包まれると目を覚ました。
「良かった、目を覚ました!」
先程、彼が助けた少女が、微笑んでいた。
「君がもしかして助けてくれたのか?」
ダンテは、自分の体を見てみると傷口が見事に塞がっていた。それに、体の奥底から力が湧き上がってくる感じがした。
「うん、私はカリン。回復魔法でおじさんの傷口を治してみたの」
「カリンって言うのか、助かったよ。ありがとな!」
「おじさんも助けてくれたから、私も助けなきゃって思ったの。おじさんが元気になってくれてほんとに良かった!」
「カリンがいなかったら、多分今頃、俺はあの場であの世行きだったかもしれない。カリンは、俺の命の恩人だ」
「命の恩人だなんて……」
カリンは顔を林檎のように赤くして、恥ずかしそうにする。
「この森は危ない。また、魔物が出てくるかもしれない」
また魔物たちが少女を襲いかかることを心配し言った。
「大丈夫。ここは、この緑の神殿の近くだから魔物は寄ってこないと思う」
カリンは、近くにある神殿を指さした。そっと、ダンテは彼女の指差す方向を見ると、驚愕する。
「緑の神殿。世界樹の根もとにあったのか……」
ダンテは、森の木々に包まれ、苔に覆われた神殿を見た。神殿からは、邪気を浄化するような力が漂っている。この力を嫌い、魔物たちは寄り付かないのだろう。
「おじさんも、力を感じるのね」
「ああ、マナでもハンナが言っていた魔族のマゴでもない。この力は一体……」
「ピュア。大自然にもとから宿るとされる大地の力ってみんな言ってる」
「ピュアだと。また、新しい力の概念が増えた……。この世界には、マナ、マゴ、ピュアの3つの力があるのか」
ダンテは、頭を両手で抱えながら、情報を整理する。
「おじさんに回復魔法を使えたのも、このピュアの力があったからよ」
「なるほど、そういうことだったのか」
ダンテは、カリンが全身の傷口を塞いでしまうほどの強力な回復魔法を使用できたのか疑問に感じていた。彼女の言葉を聞いて、合点がいった。
「さて、元気になったことだし。ちょっくら、神殿の攻略でもするか」
ダンテは、片腕を回し凝り固まった身体をほぐし、神殿の扉の前まで歩いて行く。
「おじさん、神殿の扉は開かないの。誰一人として、開けられた人はいない」
カリンは、神殿に近づくダンテに忠告する。だが、ダンテは、構わず神殿の扉まで行くと言った。
「メイテツと約束したんだ。この中に眠る力と記憶を取り戻すって」
そう言って、ダンテが神殿の扉が左腕で触れると、扉が幾何学的な模様を浮かべ光ると、緑の神殿の扉がひとりでに開いていく。
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