27_巨剣
ギシギシと軋む音を立てて剣が揺れる。
相変わらず、プクロウは己の本能のままにただ目の前のものを食そうと鉤爪で少女を捕らえようとしている。
ガパッとプクロウは大きな口を開け、何本も並んだ鋭い歯を覗かせる。まずは、少女を守るダンテをその大きな口で食そうとしているようだ。
「させるか!」
口から、体力の空気を吸い込み全身に巡らせると、ダンテは両腕の筋肉を隆起させ、常軌を逸した馬鹿力で、プクロウを弾き飛ばした。
「ビビビビビビビビビビビ!!!!」
弾き飛ばされたプクロウは、身の危険を感じ奇妙な声を響き渡らせる。耳をつんざくほどの甲高く不快な音だ。
この気配、まずい。
ダンテは周囲の魔物の気配を感じ、緊張が走る。
「来る」
彼がそう言った直後、森の木々から複数のプクロウたちが現れた。先程のプクロウの鳴き声は、周囲にいる仲間に自らの危険を伝える声だったのだ。
「あんなに、たくさん。怖い」
少女は、恐怖で身を震わせ縮こまる。
「俺の後ろに、できるだけ隠れてるんだ。俺が君を必ず守るから」
ダンテは、恐怖で震える少女を安心させるための言葉を言った。少女は、コクリと頷きダンテの後ろに身を隠す。
この少女を救えるのは、俺だけだ。面白い。やってやるよ。これくらい、何でもない。大切な人を失った時に比べれば。
複数のプクロウが両翼を羽ばたかせ襲いかかる絶望的な状況下でも、ダンテは笑みを浮かべていた。元より確固たる策があったわけではなかったが、幾度もの困難を乗り越えた末に磨かれ洗練された戦闘センスが一つの解を導き出す。
テラ、お前の光剣はこんな感じだったよな。
ダンテは白の神殿内で見たテラの光剣を思い出していた。巨大な剣の威力に苦戦を強いられた経験のおかげで、今でも鮮明にあの時の光景を思い出せる。
彼は左腕を振ると同時に、メイテツを瞬時に巨大な剣に変えて今にも襲いかかろうとする無数のプクロウの身体を一瞬で断ち切り光の粒子に変える。
彼の後ろにいる少女は、あまりに一瞬の出来事で何が起こったのか分からず唖然とする。
そんな彼女に、ダンテは微笑み優しく話しかけた。
「怪我はないか?」
「うん、何も怪我はないよ。でも、おじさんが……」
傷だらけでボロボロのダンテを心配そうに少女は見つめる。
「良かった……」
バタッ。
ダンテは少女が無事であることが分かると安堵の表情を浮かべ、緊張の糸がぷつりと切れると意識を失い倒れた。
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