30_竜巻

「ぐぎゃぎゃあああああああ!!!!」


 大木の上を飛ぶ不死鳥は、ダンテたちの方を向くと甲高い鳴き声をあげて強烈な敵意をむき出しにする。耳をつんざくような威圧的な鳴き声に、思わずダンテたちは気圧されそうになる。


「カリン、物陰に隠れて」


 危険を察知し、後ろにいるカリンにダンテは言ったものの、すでに彼女は近くの石の下に隠れていた。カリンは、ダンテの言葉にビシッと親指を立てて、準備完了のことを伝える。


「カリン……さすがだ。そこから見といてくれ。あいつを倒すところを」


 脱力。


 さっと、足部の力を抜き、一気に力を入れるとダンテは瞬時に不死鳥の近くまで移動した。


 先手必勝だ。


 不死鳥はプクロウの3倍ほどの大きさがある。身体が大きい分、的としては狙いやすい敵だ。プクロウとの戦いで思いついた巨剣を使い、不死鳥の身体をあっという間に切り裂いた。


「あっけなさすぎる。こんなもんなのか、神殿の魔物は……」


 あまりのあっけなさに、ダンテは、どこか違和感を感じる。彼の違和感は、正しかった。ダンテの巨剣によって切り裂かれたはずの不死鳥の身体はみるみるうちに、ひっついていき、何事もなかったかのように元の姿へと戻る。


「もとに戻った。不死身なのか」


 その様子に、さすがのダンテも戸惑う。


「ピギャアアアアアア!!!」


 不死鳥は、身体を一刀両断されたことでさらに怒りを募らせ鳴き声を轟かせる。すると、地面から幾つもの大木が生える。


「な、何!?」


 大木が生えると同時に、大木の根っこがダンテの足にぐるりと絡みつき、拘束する。


 動きを封じられた!?


 ダンテは、根っこから逃れようとするが複雑に絡みついていてなかなか抜け出すことができない。そんな彼にとどめを刺そうと、不死鳥は両翼を羽ばたかせ凄まじい強風を生み出す。


 強風に触れた葉っぱは、マナを纏い怪しげに光を放つ。


 これをまともに食らうとまずい。


 マナを纏い凶器と化した大量の葉っぱが、強風に乗って竜巻となり、ダンテを襲う。


「おじさん!!」


 石に隠れて見ていたカリンは、不死鳥の攻撃にあっという間にダンテが飲み込まれたのを見て、思わず叫び声を上げた。


 大量の葉っぱが竜巻に乗ってクルクルと回転していて、ダンテの姿を視認することができない。ただ、ビュービューと強風の吹き荒ぶ音が鳴り響く。

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