31_逆転
不死鳥は、ダンテを襲った竜巻を依然として見つめていた。警戒を解く気配はない。
本来ならとっくに消えてなくなっているはずのダンテのマナが未だに感じられたからだ。
次第に、竜巻の勢いは弱まっていき、中の様子があらわになっていく。竜巻が消失した後、そこには悠然と立つダンテの姿があった。
カリンはダンテの無事な様子を見て、にこりと安堵の笑みを漏らす。
彼女の視界に映るダンテの姿は、今までに見たことのない異形の姿をしていた。
ダンテはメイテツを黒い鎧のように全身に纏わせ立っていた。四方八方、あらゆる角度からの攻撃に耐えうる防御を模索した結果、たどり着いたのが、メイテツを全身に纏わせるという戦闘スタイルだった。
「心配かけたな、カリン。俺なら大丈夫だ」
ダンテは、カリンの方を向くと微笑みながら言うと、不死鳥の方にさっと視線を向ける。
なんとか、メイテツを全身に纏わせることで攻撃を防げたけど、問題は奴をどうやって倒すかだ。
ダンテは、不死鳥を観察し、突破口を見つけ出そうとする。だが、敵意をむき出しにする不死鳥は考えさせる猶予を彼にそう易易と与えてはくれない。
今度は、生み出した疾風を縦横無尽に操り、舞い散る葉っぱを一箇所に濃縮すると、巨大な球体を作り出す。
まさか、あの球体で攻撃する気か……。
ダンテは、唾をゴクリと飲み込む。
彼が予想した通り、不死鳥は両翼をバサッと力強く動かすと強風を生み出し、その風の勢いでマナが濃縮された巨大な球体をダンテに向かって放った。
やっぱり、そう来るか。ピンチこそ、最大の反撃のチャンスだ。やってやる!
球体を見た時から、ある考えが頭にぱっと浮かんでいた。成功する確証などないが、成功すれば不死鳥を一気に追い詰められるかもしれない。
ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
球体が凄まじい勢いで空を裂き迫る中、ダンテは意識を集中させ、頭の中で構築したイメージを左腕のメイテツで具現化させる。
カキン!!
その直後、気持ちのいい音が響いた。
ダンテは、咄嗟にメイテツを巨大なバットの形へと変形させていた。そして、超人的な動体視力で勢いよく飛んできた球体に狙いを定めると左腕の巨大バットを振る。
バットと球体が接するコンマ数秒の時間の狭間にダンテは、軌道を見積もり打ち返した。彼の思い描いた通り、打ち返した球体は見事に不死鳥に直撃した。
「ぴぃええええ!?」
不死鳥は、素っ頓狂な鳴き声が響く。自ら作り出した球体を思わずぶつけられ、地面にドスンと落下する。
「これで終わりだ!」
落下した不死鳥が、態勢を立て直しどこかに飛び去ってしまう前に素早く接近すると、すかさず、とどめを刺した。
しかし、とどめを刺したのはいいものの、光粒子となって消えるのではなく、朽ちた木の姿になって神殿の地面になぜか溶けていく。
「おじさん、まだだよ。大木を見て!」
カリンは鬼気迫る声で、大木の方を指さして言った。ダンテも大木の方を見ると、苦笑いを浮かべる。
「これからが本番という訳か……」
ダンテの視線の先には、大木から生み出された無数の不死鳥たちが悠然と飛翔していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます