04_時の魔女
ダンテは、ギュッと地面を握り締めた。魔法による残酷な閃光に包まれて、あっという間に村ごと消し飛んだ時の光景が再び頭に浮かんだ。
「カナメ……フタバ……」
村には、ダンテの家族もいた。妻のカナメと娘のフタバだ。走馬灯のように家族と過ごしたふとした日々の記憶が彼の頭の中を駆け巡る。ダンテは、胸を抉られて大きく穴が空いてしまったような気持ちになった。
仇をうつことができなかった。ごめん。俺ももうすぐそっちに行くよ。
ダンテは瞳を閉じると、涙が頰を伝う。ポタリポタリと流れ落ちた涙が地面を薄暗く染める。
「あなたはここで死ぬべきではない」
悲しみに暮れる彼に話しかける優しさを孕んだ女性の声。ダンテははっと目を開き、顔を上げる。
「君は誰だ?」
視線の先には、全く面識のない女性が側に立っており、ダンテの方を見つめていた。
「私は、ハンナ。あなたを遠い未来から救いに来た。伝説の剣士であるあなたを」
ハンナは、ダンテの傷口に手をやり、回復魔法をかける。すると、彼女の手から温かな光が放たれ、ダンテの傷口を優しく包みこみ、見る見るうちに、ダンテの傷口がふさがっていく。
「伝説の剣士……何を言っているんだ」
彼女の言った伝説の剣士という言葉が引っかかり、ダンテは彼女に問う。
「あなたは伝説の剣士になる逸材ということよ。さあ、行きましょう。1000年後の未来へ」
そう言って、ハンナは立ち上がると、倒れ込むダンテに手を差し伸べる。
「……」
ダンテは、咄嗟にどう返答すべきか分からず沈黙する。彼女に触れられていた傷口をそっと見てみると、傷口は完全に塞がり出血が止まっていた。
一瞬で傷口を塞いでしまうなんて。彼女も魔法使いなのか。ならば……何故俺を助けるんだろうか。
ダンテは見事に塞がった傷口を見て彼女の力に驚愕する。
自分の傷を直してくれたとはいえ、この力は敵国であるマナ王国が生み出した魔法という力に違いない。そんな考えが頭を過ったこともあり、すぐさま彼女に対する警戒心を完全には拭えなかった。だがひとまずダンテは差し伸べられた彼女の手を握り締めると、立ち上がり感謝の念を伝えた。
「ありがとう。助けてくれて」
「どういたしまして、いち早くここから去りましょう。七賢者たちの攻撃が来る」
彼女は、徐々に迫ってくる魔法使いたちの方を眺め少し焦りを見せる。
「七賢者たち、向こう側から歩いて来てる人たちのことか」
ダンテも向こう側から巨人を引き連れる七人の魔法使いの方に視線を移す。
「ええ、あなたを今から1000年後の未来に送る。このまま、私の手を握って、目を瞑って」
七賢者たちは、一斉に杖を天に掲げ始める。杖の先は、神々しい光を放ち、後ろにいる巨人たちを動かし、今にもなんだかの攻撃をしようとしていた。
「わ、分かったよ!後でちゃんと、教えてくれよ。君のことを!」
急いで、ダンテは温かな彼女の手をギュッと握りしめ、目を瞑った。
「また会えたらね。ダンテ」
そんな彼女の声を聞いた直後、ダンテたちは強烈な光に包まれ、ブォンという音とともに、1000年後の未来へと旅立った。
ドォーン。
彼らがいなくなった瞬間、凄まじい爆発音が轟く。巨大たちから放たれた幾数もの魔法が混ざり合い、大地と天を裂く程の大爆発を生み出していた。
地面には、巨大な穴が空き、穿たれた地面の断面は高熱で赤みを帯びている。煙が上空の曇り空まで達し、砂埃が舞い上がっていた。
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