白神山編

57_白神山へ

「ええ、その通りです。ダンジョンが出現した山こそ、白神山。その麓にある白妖の泉に彼を連れていってほしいのです」


 突然の女神の提案に、まだダンテは彼女の意図を図りきれずにいた。


「白妖の泉……そこに連れて行ってどうするんだ?」


 ダンテの問いかけに落ち着いた声で女神は答える。


「白妖の泉の水には、彼を操っている怨虫を消し去る作用があります。その水を使えば、彼を正気に戻せるかもしれません」


 女神が言葉をちょうどいい終わった直後だった。何かが迫りくるような激しい轟音が響く。


 どぉおおおおおおおおおおお!!!!


 さっと、轟音が鳴り響く方向に視線をやる。


 光の斬撃が、地面を穿ちながら、ダンテに向かって迫ってきていた。彼はこのままだと、迫りくる光の斬撃にスパッと一刀両断されてしまう。


 ろくに女神と話す時間もない。


 ダンテはすかさず、風の力を使用し、風の勢いで光の斬撃をなんとか左側に回避する。風の力の火力がなければ、回避できずに身体の一部を切り裂かれていた。


 厄介だな。こんな攻撃手段もあるのか。遠距離攻撃も可能なんて知らなかった。


 風の勢いで吹っ飛んでいる最中、近距離だけでなく遠距離にも対応できるテラの戦闘スタイルにダンテは苦戦を強いられつつ、テラの位置を確認する。


 いない。テラの奴、どこにいった……。


 光の斬撃に視線を奪われているほんの少しの時間の切れ間に、テラはダンテの背後に移動し、光の剣を構えていた。


 テラは、ダンテであれば、風の力で光の斬撃を神殿の壁とのスペースがある左側に避けるだろうと予想していた。あらかじめ回避されることを見込み、テラは光の斬撃を放った後、すでに彼の背後に移動していたのだ。


「ダンテ、後ろよ!」


 メイテツの声が響く。そんな彼女の声で、ダンテは、背後にいるテラの存在に気づく。


「後ろか!」


 差し迫る切っ先に、ダンテは反射的にメイテツを盾に変形させ守りに転ずる。


 カンッ。


 マナを纏ったダンテの盾にぶつかり光の剣は火花を散らす。切っ先を弾かれたテラは姿勢を崩し一時的に隙ができたところに女神の声が響いた。


「ダンテ、今からあなたたちを白神山まで送り込みます!」

 

 女神の声が聞こえたかと思うと、ダンテとテラの立つ地面が神々しく光を放ち始め、たちまちその光に包まれる。


 そっと、ダンテが思わず閉じた瞳を開けるとそこは雪に包まれた白一色の世界が飛び込んできた。近くの地面からは世界樹の根のようなものが生えている。世界樹の根を通してここまで女神が彼を移動させたようだ。


 く、くそ、寒い……。ここが白神山なのか。


 ダンテは顔を上げると、天高くダンジョンがそびえる巨大な山が誇らしげに立っていた。

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