82_ヨカ

 メイテツは、光に触れて過去の記憶の一部が蘇る。彼女は、ダンテに蘇った記憶のことを話した。


 ※※※


 ある日、メイテツは、赤ん坊の頃から拾い育ててくれた魔物リヨに突如こう告げられた。


「メイテツ、あなたはそろそろ人間社会で生きたほうがいい。人間は魔物とは、相容れない存在。近くに人間の住むフロラという街があるの。そこであなたはこれから生活しなさい」


 リヨは、まっすぐメイテツの方に視線を向けてそう告げた。


「えっ……」


 メイテツは、正直、唐突な彼女の提案に戸惑いを隠せなかったが、彼女自身、リヨから話を聞いて人間との生活に憧れと興味をずっと持っていた。


 リヨから告げられたフロラでの生活について不安を抱くも、メイテツの決断は意外にも早かった。


「分かったわ。私、これからフロラで人々と暮らす」


 メイテツは数日間、リヨとの残り少ない共同生活を噛み締めながら過ごした後、彼女に今まで育ててくれた感謝と別れを告げる。


 そして、別れを惜しみながらも彼女のもとを離れ、新たな生活に胸躍らせながら一人、フロラの街へと向かった。


「ここがフロラね」


 メイテツは、生まれて初めて見た人々の街の外観に目を輝かせて、見つめる。


 街の中に足を踏み入れると広場に多くの人が集まり、フロラの街は何やら騒然となっていた。


「なんだか、人々が騒いでるみたい。なんだろう?」

 

 メイテツは顔を傾け、人々が何にそんなに騒然となっているのか気になった。彼女が見た街の人々は、ある建造物を指さして、何やら叫び声を上げていた。


「なんだ、あの塔は……」


「地面から突然現れたみたいだぞ!」


 街の人々から驚きの声が漏れていた。彼らが見上げているのは、塔型のダンジョン。空を突き刺すように高くそびえ立つその姿は、フロラの街にあるどの建造物よりもその異様な存在感を漂わせている。


「なにあれ、すごい……」  


 メイテツも、ダンジョンの壮大な佇まいに感嘆の声が口から自ずと出た。


「お前さんが、メイテツか。俺はヨカだ。リヨからはお前さんのことを聞いてる。この街で、お前さんを面倒見ることを頼まれてるんだ、よろしくな!」

 

 塔型のダンジョンを見ているメイテツに話しかけてきたのは、ガタイのいい大男ヨカだ。


「あなたが、ヨカさん……こんな人なんだ……」


 メイテツは、少し嫌そうな顔をした。リヨからヨカのことは聞いていたが、想像していた人物像とだいぶかけ離れていた。失望感が彼女の顔面から滲み出ていた。


「おい、そんな顔をしないでくれよ!俺は、自分で言うのもなんだけど、こんなガタイだが悪いやつじゃない。お前さんに危害を加えるつもりはないからな。安心してくれていい」


 これが、この街フロラで最初にヨカと出会った瞬間だった。それから、しばらく、メイテツはフロラとともに人間らしい生活を送るのだが……。


 平穏な日々はある時突然、断ち切られることとなる。

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