世界変革編
13_東へ
ダンテは思わぬ彼女との再会に少し驚いたが、気持ちを切り替えて、ドラゴンの頭上に立つハンナに向かって言葉を投げかけた。
「ハンナ、もっと早くに登場してほしかったよ。テラとかいう変な奴に絡まれる前に」
すかさず、テラはダンテの言葉にピクリと反応した。
「あのう、変な奴っていうのは止めてくれる。なんか傷つくからさ」
「そのことだけど、私が、テラにお願いしてあなたを襲わせたの。まあ、その辺の話は、ドラゴンに乗りながらゆっくり話しましょう」
そう言ってハンナは、持っていた杖をそっと掲げると、ダンテとテラの身体が急にふわりと浮かび上がった。
「うわっ、体が突然浮いたぞ!?」
未だに魔法に見慣れていないダンテは、突如、自分の体が上がり、豆鉄砲を食らったような顔をする。
「反応が面白いね。魔法をあまり見てこなかった人の反応ってこんなんなんだ、へぇ~」
テラは、ダンテとともに宙に浮かびながら、顎に手をやり興味深そうにダンテの反応を観察する。
「俺を珍獣を見るような目で見ないでくれるか」
ダンテはさっと気に食わない様子でテラの方をさっと見た。ダンテとテラがドラゴンの頭上まで運び、二人の傷だらけの身体を見てハンナは心配そうに言った。
「すごい、傷ね。ボロボロじゃない」
上から覗き込むハンナに目線をやり、ダンテは答えた。
「この男との戦いで、ありったけの力を使ってしまった。立って歩く体力もなさそうだ」
ダンテは、自分の中にあるマナのほとんどを使い果たしてしまった。残っているのは生命活動に必要な極少量のマナだけだ。ほっとおけば、命の危険すらある。
「頑張ったわね。私の回復魔法で、傷を治すわ」
ハンナは、傷だらけのダンテとテラの身体に手をかざすと、回復魔法で傷を治療する。彼女の手から放たれた光が、傷口を塞ぎ肌を修復するとともに不足したマナを補充する。
「ありがとう、ハンナ。助かるよ。おかげで元気になってきた」
ダンテは、しばらく、彼女の回復魔法による治療を受けある程度動けるようになり、感謝の言葉を述べた。
「感謝の言葉はいらないわ。私がテラにあなたの実力を確認して来てと頼んだせいで結果的にあなたを傷つけることになってしまったから。まさか、テラがあそこまで本気になるとは思わなかった」
ハンナは、何かいいたげにテラを眺める。
「久々の強者に出会ってつい血がさわいじゃったんだよね。ごめん、ごめん」
テラは、軽く詫びの言葉を言った。どうやら、あまり反省していないようだ。
「完全に治っているわけじゃないけど、二人ともある程度回復したようだし、そろそろ行きましょうか。ドラゴンの体にしっかり掴まって」
ハンナの合図で、ドラゴンは巨大な両翼を力強く羽ばたかせ、白の神殿の頂上から勢いよく飛び立つと、そのまま一直線に天に向かって高く飛翔する。
「ハンナ、俺をどこに連れて行くつもりなんだ」
ダンテは飛ばされないようにドラゴンにしがみつきながらハンナに叫んだ。
「私たちが拠点にしている虹の神殿よ」
ハンナが一言答えるとドラゴンは東側で広がる森の方へ滑空した。
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