49_侵食
全身が猛火で炙られているかのように熱い。気を抜けば、意識がたちまち断ち切れそうだ。
ダンテは、全身が焼けるような苦痛に襲われながらも、なんとか意識を保っていた。
「あの球体、どうやらマゴを直接、あなたの体に流し込んだみたい。このままだと、ダンテ、あなたは人ならざるものになってしまうか……最悪、命を失ってしまう」
メイテツは、ダンテの体内を徐々に蝕んでいくマゴの流動を感じ取り、彼に起こっている深刻な事態を悟った。
「確かにこのままだと、かなりヤバそうだ。マゴを取り除く方法はないのか?」
ダンテは額から汗を流し、息を乱しながら、メイテツに問いかける。
「できるかどうか分からないけど、マゴが全身に広がってしまう前に、あなたのマナでマゴを抑えて一箇所に留めて。それを私が体外に出してみる」
メイテツの自信なさげな声がした。
「わかった、やってみる」
ダンテは、深呼吸をし気持ちを整えると、全身のマナを操り、球体から流し込まれたマゴが広がらないように一箇所にぎゅっと抑え込む。
「いい感じよ。その調子で、抑え込んでて、私があなたの身体からマゴを体外に出す!」
「メイテツ、抑えられないかも。侵食されていく!」
ダンテは、グッと噛み締め顔を歪ませる。一瞬、マゴを抑え込めたかのように思われたが、マゴの力は凄まじく、逆に彼のマナを侵食していく。
「無駄なことだ。一旦、宿主を得たマゴは完全に消費しない限り消えはしない」
黒い球体は、足掻きを見せるダンテたちを見て呟いた。
「完全に消費する……そうか、なら、この方法で行けるかもしれない」
黒い球体の何気ない言葉を聞き、ダンテはこの絶対絶命の窮地を乗り越えられる考えをふと思いついた。
「ダンテ、その感じだといいことを思いついたみたいね」
「ああ、風の力だ。メイテツ、大砲スタイルじゃなく、通常の風の力を使おう!」
「そういうことね、分かったわ!」
ダンテの頭に浮かんだイメージがメイテツに以心伝心で伝わる。彼のやろうとしていることが必ず成功する保証はない。だが、彼女は彼の考えに賭けることにした。
ダンテの両手をメイテツは緑色にさっと変色させると、後ろを振り向き方向を確認する。
「何をする気だ」
黒い球体は、すっと視線を向け、ダンテのおかしな動きに反応を示す。
「じゃあな、俺は、一旦、ここから退場させてもらう。ありったけのマゴを残してな」
ダンテはそう言うと、ピュアの力を両手に集中させると、前方にマゴを含んだ風の力を勢いよく放った。
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