17_運命の時
少し沈黙した後、ダンテはようやく口を開く。
「俺が……でも、なんで、俺なんだよ。テラもいるじゃないか」
ダンテは、相変わらず膝をつき女神に従順な様子のテラを見る。
「あなたが、邪剣に選ばれた伝説の剣士だからです。邪剣の力を使わないと、塔のダンジョンに奥地にある秘石を破壊できないのです。私は見ました。あなたが、秘石を破壊しダンジョンを攻略していく様子を」
神殿の攻略は、メイテツと約束してしまった。それに加えて、塔のダンジョン攻略もやらなくてはいけないのは、なかなか骨が折れる。ダンテは、そうやすやすと女神の要求を受け入れることができなかった。
ダンテが腕を組み悩んでいると、ハンナが話しかけてきた。
「お願い。女神様のお願いを引き受けて上げて。女神様が、あなたを救うように私に頼んだの。女神様の計らいがなければ、あなたは七賢者たちに襲われ命を失っていた」
ハンナにダンテは命を救われた。その借りを仇で返すわけにもいかない。弱いところを突かれてしまった。
ダンテは、彼女の話を聞いて渋々了承した。
「分かったよ。ダンジョン攻略もやらしてもらう。もし塔が、本当に出現したらの話だけど……」
「ありがとうございます。命がけのダンジョン攻略になりますが、どうか宜しくお願いします。ダンテ、あなたの行いで多くの人々の命が救われます」
女神は、優しい微笑みを浮かべるとダンテに感謝の気持ちを伝える。
その直後だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
まるで、大地がひっくり返ったかと錯覚するくらい激しい地震が起こる。泉の水は波を立てて荒れ狂う。女神は形を保てなくなり、形を失ってしまう。周りの神殿の建物も、揺れてはいるが不思議と崩壊する様子はない。
ダンテは、なんとか強靭な肉体のおかげで揺れに耐えて立っていられたが、ハンナとテラは地面に両手をつき揺れに耐える姿勢をとっていた。
「すごい揺れだ!一体何が起こったんだ!」
揺れに耐えながら、ダンテは思わず声をあげる。
「もしかして、これが女神様が言っていた世界の異変なのかもしれないわ!」
ハンナは、地面に手をつきながら顔を上げ答えた。
「異変?これがそうなのか!」
ダンテは、泉の方に目をやるが、揺れがあってから女神は姿を現さない。女神が姿を現さないのを見て、テラは話し始める。
「女神様は、お眠りのようだね。女神様の予言通りなら、とんでもないことが起こる」
テラは、一人立っているダンテに負けずとサッと立ち上がった。
「とんでもないこと、まさか、それって……」
ダンテは、さっとテラの方を振り向き目を大きく見開く。そんなダンテにテラは神妙な面持ちで一言、言った。
「ああ、魔法が使えなくなる。そして、ダンジョンから溢れ出た魔物たちによって多くの人々の命が奪われるかもしれないってことさ」
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