43_弾丸のごとく

「広範囲に風を吹かせ過ぎて体が吹っ飛んでしまったんだわ」


 ダンテはふとメイテツが以前に言っていた言葉が頭をよぎった。


 ……そうか、放出の仕方が違うんだ!カカは、手のひらから、衝撃波を放つ時、弾丸のように衝撃波を放っている。俺も、同じことができるかもしれない。やってみるか。


 一刻の猶予もなかった。ダンテは、よりぎゅっと放出範囲を狭めて、弾丸のように風を放出できる形態へと左手を変形させる。


 大砲スタイル。


 それが、咄嗟にダンテが、たどり着いた新たな戦闘スタイルだった。


 左手を大砲のような形に変えると、筒状の左手にピュアのエネルギーが瞬時に濃縮される。ダンテは、前方から迫りくる衝撃波に視線をやると、左手に濃縮したエネルギーを風の力に還元し弾丸のごとく解き放った。


  やっぱり、身体が、吹き飛ばされない。


 ダンテは風を解き放った瞬間、いつもとの確かな違いを感じていた。彼の推測通り、弾丸のように風を放てば身体は後ろに吹き飛ばされることはなかったのだ。


 ただ、大砲スタイルの利点はそれだけではなかった。


 弾丸のように解き放たれた風は、前方に貫通していく力が増したことで、速度と威力ともに大幅に向上していた。そのおかげで、風の力はこの瞬間、カカの衝撃波に対抗しうる威力を誇っていた。


 これなら、衝撃波を打ち破れるかもしれない!やれるか、いや、やるしかない!


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!


 ダンテの風の力とカカの衝撃波が激しくぶつかりあい、互いの強さを主張し合うかのようにけたたましい轟音が周囲に響き渡る。


 ダンテは、カカの衝撃波に負けないように、さらに風の力の出力を上げるが、両者の力は、ほぼ互角。ぶつかりあった力は、互いに力を打ち消し合い、消滅する。互いの力がぶつかりあった、ちょうど真下の地面は酷く穿たれ、両者の威力の凄まじさを物語っている。


「面白い。少しは、遊びがいがありそうだ」


 今までダンテにあまり興味のなかったカカだったが、衝撃波を防がれたことで己の戦闘意欲を刺激する対象物として彼に興味を示す。


 良かった。コウとヒイの二人は、テラを連れて虹の神殿に行ってくれたようだ。


 ダンテは、無事に、背後にいた3人がこの場から離れたことを確認し安堵する。


「お前たち魔族は、なぜ、罪のない人々を襲う?」


 静寂に包まれ、カカと二人となる中、ダンテが、彼に問う。すると、その問いかけを聞いたカカは突如、高笑いをし答えた。


「フハハハハハハハ、なぜお前ら人間を襲うだと……。そんなの決まっているだろう。お前たち人間は生まれた時から、罪を背負っているからだ」


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