104_マナクロス

 ダンテとテラが剣を交える。その刃がぶつかる瞬間、互いのマナが共鳴し、まばゆい光が空間を裂くように迸った。


 なんだ、この光……何をしようとしている……。


 ソフィは目を細め、異様な光の中心に立つ2人を見た。


 直感が告げていた。彼らは、何か決定的な一手を放とうとしている。


 普通ならば、ソフィは、何かをしようとする2人をためらいなく阻止していただろう。だが、ソフィはその場に立ち尽くした。


 胸の奥から込み上げてくるどす黒い感情、それをぶつけるにふさわしい相手が今、目の前にいる。そう感じていた。


 今、壊してしまうには惜しい。


 もっと見たい。もっと楽しませてくれ。


 そんな歪んだ好奇心が、彼の心を支配していた。


 ソフィは腕を組み、静かに、まるで舞台の幕が上がるのを待つ観客のように、2人の様子を見つめる。


 なぜだ。攻撃してこない……。


 ソフィの態度に違和感を抱きながらも、ダンテは目の前のチャンスを逃さず、テラとのマナをさらに同調させる。


「「マナクロス」」


 2人の声が重なった瞬間、交差したマナは爆発的に光を増し、互いの力を引き上げ合っていく。その光は神々しく輝きを放ち、周囲の空気すら震わせた。


 全身を駆け巡る力に身を委ねながら、ダンテとテラの身体は限界を超えて強化されていく。その波動は、ソフィの皮膚を焼くように襲いかかる。


 だが、ソフィはその力に恐れを抱くどころか口元を吊り上げ、にやりと笑った。


「狩る」


 呟いたその瞬間、彼の腕が変形し、禍々しい鎌と化す。両翼を大きく広げ、風を裂きながら一気にダンテたちへと迫る。


「見える」


 今の2人には、ソフィの殺意すらも、ゆっくりとした映像のように視界に映っていた。マナクロスによって、肉体と精神が極限まで研ぎ澄まされている。


 ソフィの鎌が閃く瞬間——


 ダンテとテラは、俊敏な動きで、さっと避けた。


「なに……かわした、だと?」


 ソフィの表情が初めて揺らぐ。鎌の一撃には、一切の容赦も妥協もなかった。完璧な間合い、無駄のない軌道、それでも、2人は見切り、見事に回避してみせた。


 ソフィは絶句した。


 まさか、今の攻撃を躱すとはな。面白い。


 ソフィは、光の中に立つ2人を見つめながら、言葉にもならない感情を喉元で押し殺した。


「今だ、決めるぞ、テラ!」

「うん、これで終わらせる!」


 マナクロスの持続は、およそ30秒。それが切れる前に、勝負をつけるしかない。2人は剣を構え、溢れんばかりのマナを刃に纏わせた。


「させるか……ここで、消し飛べ!」


 ソフィも全力を振り絞る。両手を前に突き出し、内に渦巻く邪悪なマゴを収束させるのだった。

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