47_未知の生命体
やったのか。カカを倒した……。
地面に倒れ込んだカカを見てもなお、ダンテはこの戦いに勝利した実感を持てずにいた。
魔族は魔物のように、光粒子になって消えないのか。
ダンテは、魔族についてよく知らない。1000年前には、魔族という存在がそもそも存在しなかった。
ダンテは、カカの生死を確認するため、彼のもとに近づく。
「まだ、意識があるのか。なんて、精神力なんだ」
カカは、身体を貫かれたにもかかわらずまだ強靭な精神力で意識を保っていた。
彼は、近寄ってきたダンテの方に視線をそっと向ける。
「最期の一撃、見事だった。お前の勝ちだ。好きにしろ。強きものにはその権利がある」
今のカカには敵意がまるで感じられない。今の状況を受け入れているように見える。
「聞かせてくれないか。魔族とはなんなのか。人間が持つ罪について」
今なら、問いかけに答えてくれるかもしれない。そう思い、ダンテは、気になっていたことをカカに問いかける。
「よかろう。我々魔族はもともと人間だったのだ」
カカの予期せぬ言葉に、ダンテは驚愕する。
「人間だった!?どういうことなんだ、それは?」
カカは、目を閉じ開けると落ち着いた様子で答えた。
「やはり、知らなかったか。それも無理もないだろう。そのことは、一部の上流階級の人間にしか知らされていない事実だろうからな」
「その話が正しければ、上流階級の人間が、意図的に、魔族が人間であったという事実を隠しているように聞こえる。その事実を公にすることが、何か不都合があるのか?」
「魔族がもともと人間であることは、隠された事実のほんの断片でしかない。本当のタブーは、もっとその事実の奥側にあるのだ」
「まだ隠された事実があるのか……一体なんなんだ、その事実って」
ダンテは、この世界の人間社会の闇の根深さを感じゴクリとつばを飲み込んだ。
「ああ、それは……うっ!?」
カカが、さらに隠された事実を語ろうとしたところで言葉を詰まらせる。
「どうした、カカ!?」
ダンテは、カカの異変に思わず叫び声を上げる。
「体の中のあれが蠢き始めた!よく聞け。隠された事実を知りたいのであれば、探せ!パンドラの匣を!」
カカの身体の一部がボコボコと蠢いて何かが飛び出そうとしていた。そんな状況の中、悶絶しながらカカは、ダンテに大切なことをできる限り伝えようとする。
「パンドラの匣……」
ダンテにとって聞き覚えのない言葉だった。それが意味するのは、ものなのか、それとも場所なのか見当がつかない。ただ、この世界の根幹に関わるような重大な言葉に思えた。
「……」
カカが沈黙した直後。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
湧き水が吹き出したかのようものすごい勢いで、カカの身体から紫色の何かが天に向かって飛び出る。
「なんだ、こいつは……ムカデ」
ダンテの瞳にその何本も足が生えたムカデのような形をした未知の生き物が映る。
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