02_反撃
「やったのはお前か?」
大切な人たちの命を奪われ、ダンテはうちそこから沸々と湧き上がる憤怒を眼光に宿らせて魔法使いクロノを睨む。
「そうだといえばどうする?」
殺意にも近い強烈な彼の敵意に触れてもなお、クロノは、平然としており何事もなかったかのように微動だにしない。それどころか、彼を嘲るような笑みを零している。
ダンテは、悪びれることもないクロノの問いかけに、剣先をクロノにさっと向けて一言言い放った。
「仇をうつ!」
クロノは、彼に剣先を向けられて臆するどころかむしろ上機嫌になる。
「いいね!!!僕はね……。君みたいな殺る気に満ちた奴の戦意をへし折って絶望した声を聞くのがこの上なく好きなんだよぉおおおおお!!!!!」
クロノは、狂ったようにそう叫ぶと、杖を天に掲げる。呪文を唱え再び地面からニョキニョキと根っこを生やすと、その根っこでダンテたちを襲う。
来る。
クロノは、ずば抜けた動体視力で前方から来る根っこを紙一重のところで体を左にそらし回避する。回避していなければ、間違いなく根っこに顔面を貫通させられ、今頃命はなかっただろう。一瞬の油断が、命の分かれ道になる状況だ。
「やるね。君。大概のやつは、さっきの攻撃で花を咲かせるのに。やっと、歯ごたえのある相手が現れて、嬉しいよ」
クロノは、久しぶりに強敵と出会い気分を高揚させ狂気的な笑顔を浮かべる。そんな彼の視線の先には、ダンテの背後で、倒れる剣士たちの姿だった。剣士たちの死体からは、不気味な色彩の花が咲き乱れている。
ダンテは、後ろを振り向くことはせず奥歯をぐっと噛み締め、眉を寄せる。
「殺す」
彼の口から出た殺意に、クロノは、目をつむり両手を前に出し余裕を見せる。
「宙に浮かぶ私を、魔法が使えないあなたがどうやって殺すと言うのですか?」
ダンテは、そのわずかな隙を見逃さなかった。持っていた剣を構え、瞬時に体を一回転させると勢いよくクロノのほうに放り投げた。
「なっ!?」
先ほどまで余裕に満ちたクロノの表情が崩れる。ダンテの投げた剣は、ブーメランのようにグルグルと回転しながら、クロノの脇腹のあたりに直撃していた。
同時に、身体を宙に浮かばせる浮遊魔法が解けて、翼を射抜かれた小鳥のようにクロノは地面にどさりと落下した。
「痛い!痛い!痛い!うぅうううう!!!うぁああああああ!!!調子乗るなよ!剣士ごときがぁああああ!」
クロノは、顔を上げて目をバキバキにさせると怒り狂い、ダンテのほうにふつふつと湧き上がる殺意を向ける。
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