40_危機脱却
脱力。
まず、二人が睨み合う中、動きを見せたのはダンテの方だった。身体の力を抜き一気に再び足底に力を入れる。その緊張と緩和から生み出される踏力が、目にも止まらない俊敏な動きを可能にする。
一発、こいつの顔面に拳をぶち込んで置かないと気がすまない……。
一気に、カカとの距離を詰めると拳をぎゅっと握りしめる。
早い。
ダンテの予想以上の速さに、カカは虚を突かれる。一瞬、動きを止めたカカ。ダンテは握りしめた拳に憤怒で溢れ出たマナを纏わせると、彼に強烈な一撃を食らわせる。
「食らえぇえええええ!!!!」
ダンテの叫びとともに、カカと顔面にマナのこもった拳がめり込んでいく。殴られたカカは近くの建物の壁までぶっ飛んで行った。
やったか。確実に、顔面に拳が直撃したはずだ。
だが、カカは何事もなかったかのように立ち上がり首を傾けてコキコキと音を鳴らし言った。
「左腕はもらった」
そう言ったカカの右手には、ダンテの黒い左腕が握りしめられていた。
「メイテツ!!」
カカによって握り締められた黒い左腕を見て、ダンテは、叫んだ。
いつの間にメイテツを持っていかれた……。まさか、拳で殴りかかったあの一瞬で。
ダンテは、メイテツがカカによって奪い取られていることに気づき、さっと顔面から血の気が引いた。
「所詮、この程度。魔法を失った人間ごときが、我々魔族に勝てる道理など元からないのだ」
そう言うと、カカは持っていたメイテツを粗雑に投げ捨てた。
「次は、こちらの番だ。少しは、楽しませてくれよ」
攻撃が来る、集中しないと。
ダンテが身構えた時には、カカの右手の手のひらが、すでに目の前から迫っていた。
もうこんな距離まで。
カカの右手の手のひらに口のようなものがあるのが見えた。おそらくこの右手の口からカカは衝撃波を放っているのだと、ダンテは理解した。
食らえば、ただではすまない。それだけで勝敗が決してしまう。なんとか、回避しなければ。
思考を巡らしていると、ニョキニョキと左腕の付け根から、黒い腕が生えてメイテツの声がした。
「私なら、大丈夫!風の力を使って!」
「メイテツ生きてたのか、流石だ!」
ダンテは、メイテツが生きていることを知り瞬時に思考を切り替える。咄嗟に地面に背中から倒れ込み、両手を緑色に変色させると、カカの腹の方に向けて、ピュアの力を収縮させ生み出した風を一気に放出する。
「なに!?」
ダンテの予期せぬ挙動にカカは、意表を突かれたような声を漏らす。
これなら、背中を地面につけてるから、自分の体が吹き飛ばされる心配はない。最大出力の風の力を食らわせてやる。
「ぶっとべぇええええええ!!!」
ダンテは、この戦いを終結させるつもりでありったけの風の力をカカに向かってぶつけた。
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