11_纏い

「……」


 ダンテは目の前の巨大な光の剣を見て、何かを語ることなく沈黙する。


「これで終わらせる」


 テラは、そう言うと間髪入れずに、光の剣をダンテの方に向かって白の神殿をそのまま真っ二つにせんとする勢いで振り下ろした。


 ゴォン!!!


 巨大な光の剣が振り下ろされた直後、凄まじい轟音が周囲に響き渡るとともに、白の神殿の頂上にとてつもない衝撃が走り、砂埃がばっと巻き上がる。


 テラは、砂埃をじっと観察し様子を伺う。そして、砂埃の中で蠢く影を見てニヤリと微笑んだ。


「やはり、君はあの方が予言された伝説の剣士のようだ」


 テラの見つめる先には、歯をぐっと食いしばり、巨大な光の剣を剣で受け止めるダンテの姿があった。彼の真下の地面には、幾数ものひびが入り、光剣による剣撃の凄まじさを物語っている。


 ダンテは、右手で左手の剣を抑え、なおかつ、テラの纏いの技術を見よう見真似で、実践していた。


 ダンテにとってそれは賭けだった。テラの繰り出す渾身の一撃を受け切るには、テラがやっていた自らのマナを剣に集中させ、強度を極限まであげる方法しかなった。


 失敗すれば死。そんな苦境の中、ダンテは平静を保ち、驚異的な集中力で、テラの纏いの技術を一時的とはいえ、使用し攻撃を防ぐことに成功していた。


 まさか、俺の纏いを見て一瞬でものにするとは……。


 纏いの技術をこの戦いを通して習得したダンテの戦闘センスを目の当たりにし、テラは彼の底しれない実力を痛感せざるを得なかった。


「うぉおおおおおおおお!!!!!!」


 ダンテは腹の底から叫び声を轟かせる。彼の力強い心臓の鼓動が、強靭な両腕に新鮮な血液をザアッと流し込み、洗練された筋肉を隆起させる。彼の両腕は、プルプルと小刻みに震えながらも、巨大な光の剣を少しずつ押し返していく。


「面白い、面白いよ、君!!!力、勝負といこう!!!」


 圧倒的な力の差を見せつけられてもなお、依然として闘志を燃やし、ギラリと輝かやくダンテの眼光。彼の揺るがぬ闘志に触発され、テラの闘志も発火する。テラは自らの闘志に取り憑かれたような表情を浮かべ、目をカッと開いたかと思うと、光の剣を握る手にありったけの力を込める。


 巨大な光の剣は、さらに光を強めダンテのほうに傾いていく。今まで感じたこともない重圧が、ダンテを襲う。地面のひびがさらに根っこのように広がる。


「ぐっ、負けるか、こんなところで終わるわけにはいかないんだよ、俺はぁあああああ!!!!」


 負けずと、ダンテも今注ぎうる、ありったけのマナを剣に集中させ、テラの剣に対抗する。


 ピキッ。


「や、やばい。ダンテ、もう私の体が持たない……」


 剣の刃がひび割れるような音がしたかと思うと、ダンテの頭の中に、メイテツの弱々しい声が響いた。


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