10_力の使い方

「ダンテ、左手を剣に、変形させるイメージをして!」


 鬼気迫るメイテツの声が、ダンテの頭の中をさっと駆ける。


「よくわからないが、信じるぜ」


 ダンテは少し戸惑いながらも、とりあえずメイテツの言葉に従い、剣をイメージしてみた。すると、左手が変形し見る見るうちに剣に姿を変える。その様子を見て、興味深そうにテラは呟いた。


「へぇ~、それがこの神殿の邪剣の能力か。面白いね」

 

 カキン。


 甲高い金属音とともに、剣と剣が激しく交わり火花を散らす。ダンテは、左腕を変形させ作った剣でテラの攻撃を防ぎながら問いかける。


「何故、俺を襲う?」


 テラは、剣を押し付けながら、顔をダンテの方に寄せる。


「その邪剣は、俺も狙ってたんだよね。なのに、お前に先を越されちゃった」


 テラは不満そうな顔をダンテに見せつける。ダンテは負けずと剣を押し返し言った。


「俺から邪剣を奪いに来たのか?左腕が復活したばかりでそれは困るんだが」


「まさかそんなことしないよ。邪剣を手に入れるのは早いものがちさ。最初に実力を認めた相手にしか邪剣は扱えないし」


 テラは、力ずくでダンテの剣を弾き飛ばした。


 細身の身体でどうしてこんな力が……。


 テラの意外な力の強さに、ダンテは驚きの表情を浮かべる。気持ちを切り替えて、冷静に、相手の状況を観察する。


 通常、お腹の中央あたりにあるマナが、手を通じて剣に集中している……。自らのマナを剣に、纏わせることで力を増強させているのかもしれない。


 ダンテは、剣を弾かれ体制が崩れた状態から素早く体勢を立てなおし、テラの剣撃を受け止める。


「ぐっ……」


 なんとか、テラの追撃を防いだものの、マナを纏わせた剣を防ぐのはかなり骨が折れる。


「へぇ~、纏いを使わず、自分の腕力だけで俺の剣撃を防ぐだなんて化け物だね。さすがに邪剣を手に入れただけのことはあるみたいだ。だけど……」


 テラは不気味な笑みを零す。その瞬間、テラの中のマナが、急激に高まり激しく流動し始める。ダンテは、彼から放たれる異様な雰囲気に思わず距離をとる。


「この世界の力の使い方をまるで分かってないね」


 テラは、剣を天に掲げる。すると、膨大なマナを纏った剣が神々しい輝きを放つ。剣から放たれた光は、形を帯び、天を引き裂く勢いで巨大化していく。


 これは、さすがにやばいかもしれない。


 ダンテは、巨大化したそれを見上げ、剣を構えると唾をゴクリと飲み込んだ。


 彼の眼前には、天高く伸びる光の剣が光り輝いていた。

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