06_邪剣

 ダンテは、真ん中に突き刺さった剣から放たれる、異様な存在感に目が釘付けになっていた。


 ただの剣じゃない。離れていても、とんでもない威圧感を感じる。こんなの初めてだ。


 彼は、いくつもの剣に触れ、使ってきたがこれほどまでに異様な覇気を纏う剣を今まで見たことがなかった。ゴクリと、唾を飲み込む。


 つ、使ってみたい、あの剣。


 剣士としての本能が、彼を突き動かす。念の為、周りに仕掛けなどがないかを確認した後、真ん中に刺さっている剣のところまでゆっくりと近づいた。


 やっぱり、すごい威圧感だ。


 間近で剣の凄みを感じつつ、早速、柄を片手でギュッと掴む。


「うぉおおおおおおおおお!!!!!!」


 叫び声を響かせ、こめかみの辺りに、血管を浮き上がらせながら、力を込めた。


 スポッ。


 石の扉を開ける要領で力を思いっきり入れてたが、彼の思っていた以上に、剣は簡単に抜けてしまった。抜いた時の勢いを殺せず、そのまま激しく尻もちをつく。


「イタタタタ」


 上半身を持ち上げ、地面にぶつけたお尻を片手でスリスリと擦る。大したダメージはないが、地味にじんわり痛みが残っている。


「まさか、あんたみたいな奴が私を抜くとはね」


 どこからか、声がした。先程、扉に入る前に聞いた声だ。だが、今回は、前みたいによく分からない言語で話しかけられるのではなく、しっかり意味の分かる言葉で話しかけられている。


 ダンテは、さっと尻もちをつく時に手元から離してしまった剣の方を見た。


「剣が浮いてる!?それになんだ、あの目玉は……」


 彼は、大きく眼を開き驚愕する。剣は、目の前でぷわぷわと浮かんでおり、剣のツバの部分には目玉がある。


「私は、メイテツ。邪剣よ。今からあなたが、私を持つのにふさわしい存在か試させてもらう」


 メイテツはそう言って目を閉じると、カランと地面に落下する。


「何だったんだ……今の……」


 地面に転がり一言も発しなくなったメイテツを見つめながら、ダンテは呆然とする。


 ゴゴゴ。


 直後、神殿が揺れる音がしたかと思うと、円状の地面がものすごい勢いで、上昇し始める。


「急に、地面が上昇し始めた!?どこまで上昇するんだよ!!」

 

 ダンテは、膝と片手を地面につけ、地面が上昇する先を見る。どうやら、神殿の頂上まで上昇していくようだ。


 神殿の頂上まで行くと、ガタンと言う音を立てて、円状の地面は目的を終えたように急に止まる。


 神殿の頂上には、古びた剣がいくつも刺さっている。周りを取り囲む柱や壁などはない。冷たい風が吹き抜け、上空には蒼空がどこまでも広がっている。


「剣を用いて、私を倒してみなさい。そうすれば、あなたを認めてあげる」

 

 メイテツは、剣の形から姿を変え、黒色のスライムのような形に変貌する。目玉は一つだけで、ダンテの方を見つめている。サイズは小さく、ダンテの膝の高さもない程だ。


 サイズは小さいが、メイテツからただならぬ殺気を感じた。


 本気で、やる気だ。やられる前にやる。


 ダンテは、剣士として幾度もの修羅場をくぐり抜けてきた経験則から、先手をとることの有効性を理解していた。


 彼はすかさず近くに刺さっている古びた剣を引き抜くと、メイテツに向かって振り下ろした。


 

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