51_決着の斬撃

「逃がしたか。あのお方の命令とは言え、さすがに私の力で、遠方からこの球体を動かすのはなかなか骨が折れる。念の為、あれをヤツの体内に根付かせておいたが……」


 黒い球体は、風の力を使用して、ものすごい勢いで遠ざかっていくダンテを見て呟いた。


「さて、虹の神殿に向かうとしよう。あそこを占拠すれば、この村は我々魔族のものとなる」


 ダンテから虹の神殿にターゲットを変更しようとした時だった。周りに転がっていた瓦礫や石が急に光を帯びて浮かび上がり、黒い球体の動きを止める。


「なんだ、これは……。まさか」


 黒い球体は急に周囲の物体が浮かび上がり、集まって来る奇妙な現象を見て何かを察する。


 身の危険を感じ、慌ててダンテに視線を移すも、その時にはもう遅かった。


 黒い球体の眼に映ったのは、左腕を巨大な剣に変形させ、闘志を宿した眼光を輝かせながら急接近するダンテの姿だった。



         ーーーなんだ。


   視界がズレてーーー。


 直後、彼の姿を見失ったかと思うと、球体の眼に映し出された視界が上下で綺麗にズレる。


「何をされた……切られたのか」


 黒い球体は、風の力の勢いを利用して高速で飛んできたダンテによって一刀両断されていた。


 黒い球体を切り裂いたダンテの巨剣は、通常時の10倍近くの威力を発揮していた。そのため、容易に黒い球体の強靭な肉体を上下に二分することができた。


「テラ、これで魔族たちは倒したぞ」

 

 ダンテは、黒い球体を切り裂いた後、テラに言葉を託された時のことを思い出す。


「……」


 一刀両断された黒い球体は体内に宿していた膨大なマゴを抑えられなくなり凄まじい爆発を起こす。少し離れた地面に、着地し後ろを振り向き、その爆発する様子をダンテは眺める。 


「突然、あいつが現れた時は焦ったけど、なんとかなるものだな」

 

 ダンテは、戦闘の緊張から解き放たれ地面に大の字に倒れ込んだ。


「頑張ったわね。近くに魔物の気配はしないし。エウノキ村を守り抜いたみたいね」


 メイテツは、ダンテに優しい声で言った。


「ああ、ギリギリの戦いだったな。魔族と呼ばれる彼らは強かった。謎も多い。もっと、大切な人たちを守れるように強くならないと……」


 上空に広がる青く澄んだ青空にまっすぐ手を伸ばしぎゅっと拳を握った。


「これからどうするの?」


 メイテツの漠然とした問いに、ダンテは答えた。


「やることはたくさんある。三つのダンジョンの攻略、残り五つの神殿攻略、攫われたハンナを取り戻すこと。でも、まずは、エウノキ村の人たちのことやテラがどうなったのかが気になる。虹の神殿に戻ろうと思う」




 

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