第47話

やがて悠香は食べ終わり、満足げな顔をしていた。俺はというと、悠香を見てるのつい夢中になってしまい、食べるのが遅くなってしまった。悠香にその事を告げると可愛いなんてエヘヘ何ていうとびっきり可愛い声を出しながら言ったものだから俺は照れてしまった。あんなに悠香が可愛いと思ったのは二回目だ。長く一緒にいるとそれが普通になり新鮮味がなくなるが、ああいったヤンデレ以外の仕草を見せられると、ドキッとして可愛いと思ってしまうのだ。そんなことを思いながら食べてた。


「食べてる姿もかっこいいなぁー」


そんな乙女チックな声と表情でいわないでほしい。着いてれて食べるのを止めちゃうだろ。そう思いながらもなんとか食べ終わった。


「はいこれ食後のカフェオレね」


ちょうどいいタイミングでだしてきたな。狙ってた?まぁいいや食後のカフェオレを飲むとホットのちょっと苦い味が広がるが、さっきのみりんレモンケーキで相殺された。やっぱ食後は暖かい飲み物に限るな。ちょうどいい感じに唯衣の妖気で冷えた店内でちょうどいい感じになっている。


「それにしても妖気ってその妖怪の特性を表すと聞いていたが、本当なんだな」


「うん、だから暑いのは妖気を纏って冷やしてるんだよねぇー。暑いのは苦手だからそれをしないとすぐに熱中症になっちゃうんだよね」


だから夏は涼しいところでバイトしてるのか。妖気をあまり使いすぎると疲れるからな。常に放出していたら霊気不足でぶっ倒れる。しかもそれが女子だと襲われる可能性もあるから、なおさらか。やっぱり雪女は冬が好きか。


「そうか大変だな。妖怪には数えるほどしか会ったことないが、みんな人間界じゃ生活しづらそうだったからな」


「まぁ私は半妖だからまだましだけど、お母さんは夏は家に引きこもっていたね」


それだけ暑さは天敵ってことか。まぁ雪女ならそうなるか。それにしても妖怪も外国人もハーフって美少女だよな。アイドルやっているくらいだし。そういえばアイドルとかここの店主とか妖怪なこと知っているのか?


「人間界で妖怪なこと知ってるのってどれくらいるんだ?」


「義弘と店主くらいだね。店主は陰陽師でお母さんを通じて知り合ったんだよ」

 

陰陽師か、てことはこの店は趣味か。それにしてもここ買うのにそれなりにお金かかかっただろうな。結構有名な人なのか?名家の出身だったりして。


「ちなみに店主は加茂野家だよ。陰陽師なら有名だと思うけど」


土御門と並ぶ名家じゃん。今はむしろ政治家とも強い繋がりがあって土御門を凌いでいる。よく店を開くことを許可してくれたな。後継ぎではないのか。


「そうだな知っている。かなりの名家だ。ああ、だからこの蔵を買えたんだな。お金は持っているだろうし」


それに相手が結構有名な商人ならコネがあってもおかしくないからな。それとこの蔵を見るだけでもお金を取れそうだ。それだけ趣のある蔵だ。


「あ、そうだ二回見れるけど見る?」


「悠香は見たいか?」


「この蔵の2階は興味あるよ。だから見に行こう」


「それじゃ見させてもらうわ」


俺達は会計をした後唯衣の案内で上に上がった。そして階段を登り終えると、2階に着いた。おー机が明治時代のような感じ醸し出している。こんなところで食べたり勉強したりしたら捗りそうだな。悠香も感動をしている。まぁ特別なときだけここを使えそうだな。ドラマとかで使われてもおかしくない。


「いいなぁー。大正時代に建てられただけあってモダンな作りになってるな。こいうおしゃれさに憧れる」


「そうだね。こいう蔵を将来的に建てるのもいいかもね」


だがこれをただの物置にするのはもったいないから、2階だけ人が食べれるスペースを開けておくのもいいな。それくらいこの蔵はおしゃれなのだ。大正時代自体がモダンなものが多いが、あまり残ってるもの少ない。古くなったりして建て替えたり、戦後に土地を手放さなきゃいけなくなったりで壊したのが多いのだろう。


「そうだな、ここって使えるときあるのか?」


「小さなお茶会とかで使うね」


「なるほど地元の憩いの場として使うってことか」


お茶会でここを使えるとか贅沢だな。使う人はここの有力者だろうか。土御門家も使えるようにできないだろうか。京都から本家が来たときに是非ここを使いたい。京都は古い建物が多いが、大体が明治以前の時代のものが多いからな。こいうモダンなのはあまり見かけないからちょうどいいだろう。


「そうだね。まぁそんなに頻繁に使われないけど」


俺達はぐるっと蔵の2階を周ってみて、堪能した後、俺達は2階から一回に降りた。なかなかいい時間だった。


「それじゃ俺達はもう行くな」


「それじゃこれ私のXのアカウントね。フォローしてね!是非ライブにも来て」


「機会があれば行かせてもらう」


俺は紙を受けとりそれを鞄にしまった。あ、赤城神社行ってないじゃん。悠香に言っておくか。


「それじゃあな唯衣」


「ばいばい」


俺達は灯環を出た。なかなか有意義時間だった。大正時代の建物は写真でみるより、実際にみたほうがよかったな。それにしてもなんで戦後はああいう建てもものが少なくなったんだろうか。おしゃれなのに。





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