第33話

秋葉それはオタクの聖地であり、外国人観光客がたくさん訪れる場所だ。普通のオタクならまず俺が隣にいる時点で羨ましそうだったり嫉妬の視線を向けるものが多いだろうが、ナンパはしてこないだろう。だが外国人は別である。可愛いと思えば誰がいてもナンパする。これは偏見かもしれないが、今この状況でそれが起きている。


俺達は秋葉に着くと、まずアトレに貼ってある俺の青春ラブコメは間違っているのイラストと一緒に写真を撮っていた。道行く人たちは花梨をガン見していた。そりゃこんだけ可愛くてアニメ好きならそうなるよな。だが隣に俺がいる時点で話しかけてこない。オタクは隣に男がいるのに話しかける勇気はない。かくいう俺もだが。


だがあるヨーロッパのイケメンが花梨に話しかけたのだ。流暢な日本語で。


「君可愛いヨ。僕にこの秋葉を案内してくれないカナ?」


花梨は困っている。花梨はナンパをされたことは数多いが、大体すぐに逃げてるが、今回は外国人で俺が隣にいるから適当な理由で逃げられないのだ。そして冒頭に戻る。


「どうかなそこの男の子は僕の妹と一緒に回ったらどうダイ?」


これは彼女を作るチャンスかもしれないが、花梨が乗り気でないなら、俺はそれを断わる。その妹さんはモデルかっていうくらい美人だが。そもそもそれくらいの美人なら母国でもモテているだろうし、俺みたいな少しイケメンなアジア人には興味ないだろう。


「ねぇそこのあなたお兄ちゃんもこう言ってるしどこか行かないかしら?」


「いや花梨が乗り気じゃないから無理だ」


「そうなの?それならお兄ちゃんどこか行かなくていいから、私とどっか行かない?あなたみたいな顔がタイプなのよ。その子妹だからデートしても問題ないわ」


花梨もみて一発で妹と分かったことに驚いた。端からみたらカップル見えてもおかしくないはずだ。義理だから似てないし。やっぱ妹だと分かるものなのか?それに兄とデートしなくてもいいって狙いは俺だったのか?こんな美人なのに俺みたいなやつを相手にするとは。


「ダメです。今はお兄様とデート中なんです。他のチャラそうな人でもナンパしてきてください。貴方ならすぐに捕まえられるでしょ」


「チャラいのに興味はないのよ。硬派イケメンが好きなのよ。それに妹じゃ付き合えないわ」


「義理だから付き合えます」


そして二人で言い合っていたので俺はお兄さんの方東はなそうと少し離れた。それにしてもこのお兄さんモデルみたいなイケメンだな。さぞかしモテることだろう。


「お兄さんモデルですか?」


「一応母国ではモデルをやっているヨ。それよりごめんネ。妹がデートを邪魔しちゃったみたいで」


そこら辺のナンパ師とは全然違うな。この人は紳士だ。外国人の中でも紳士だろう。イケメンで紳士とか敵う気がしない。ナンパする外国人はヤりたいだけだと思ったが違うようだ。まぁこの人は妹に頼まれたんだろうけど。それにモデルをやはりやっているってことは妹もやっているのか?


「大丈夫ですよ。むしろこっちが観光の邪魔をしちゃったんじゃないかと思うのですが」


「それは大丈夫だヨ。元々日本人の彼氏が欲しいわと言って日本に観光に来たからネ」


日本人を求めるヨーロッパの人って珍しいな。アニメの影響か?アニメだと誰にでも優しい主人公が多いからな。特にイケメンって訳じゃないが。主人公だからそれ相応の魅力はあると思うが。ヨーロッパの方が愛してるとか普通に言うから日本人の女子はヨーロッパの人の方が魅力的に見えているが。


「彼氏を探しにですか。アニメのような人物は俺の知っている限りいないですが」

 

「やっぱりそう簡単に見つからないネ。アニメはアニメだとエマには説得したんだけどネ。どうやら話はついたみたいだヨ」


花梨達はこっちに来た。可愛いやつが二人もいるから視線を集めている。花梨は不服そうだ。それに比べてエマは満足げである。


「義弘私と連絡先を交換しましょ。じゃんけんに勝ったから連絡先交換してもいいと言う権利をもらったのよ」


今日一緒にデートをしない代わりに連絡先交換か。花梨は一切の妥協をしたくないから不服なんだな。だが一時の興味でしかないだろうから不安に思うことはないだろう。彼女ができるチャンスだが、会うことは少ないだろうから多分付き合うことはない。


「分かったよ。LINEやっているか?」


「やっているわ。あなたが最初の友達よ」


やっぱ外国じゃ流行っていないんだな。それに最初かいい響きだ。なんでも最初の人になれるのは嬉しいものだからな。俺はQRコードを見せてそれをとり、エマと連絡先を交換した。


「ふふ、とうとう日本人の男の子の連絡先をゲットしたわ」


エマならいくらでもゲットできると思うが。いづれこの旅行で俺よりイケメンのやつをゲットできるだろう。そして俺のことは忘れるだろう。まぁ外国人だから逆ナンはされないと思うが。英語しゃべれなきゃナンパできないと思っているやつが多いからな。英語ができるやつはナンパしないし。それに隣にはお兄さんがいるから無理だろ。


「それじゃ私たちはそろそろ行くわ。いづれ義弘をものにしてみせるわ」


「お兄様は渡しませんよ」


エマはウィンクをして去っていった。なにそれ可愛い。

























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る