第13話

電車を乗り継いで、千葉大学病院についた。さすが大学病院名なだけあって、いかにも色んな専門家がいそうな雰囲気だ。中には教授もいるしな。


俺はすぐに看護師さんに面会の受付をして、悠香の病室に向かった。悠香目覚めているといいな。昨日は目覚めなかったらしい。今日目覚めるはずだとお医者さんは言っていたしな。そして病室の前に着くと、俺は扉を開ける。個室なのでそのまま入っても問題ない。すると悠香がすやすやと寝ていた。顔を見ると、そこまで苦しくなさそうだ。


「んぅー。ん?なんでここに義弘くんがいるの?」


「悠香!良かった目覚めたんだな」


俺は思わず抱きついた。その柔らかさと匂いで、改めて美少女なのに躊躇なく助けれるのはすごいなと思った。


「ぐへへ義弘くんの匂いが鼻に入ってくる。ああ感じちゃいそう。頭がくらくらしちゃう」


俺は離れようとすると余計に悠香は抱きついてきた。胸を当ててくるな。柔らかすぎて襲っちゃいそうになるだろ。だがだらしなく顔を緩ませている悠香を見ると正常になった。


「いや匂いをすーはするな。あと当たっているから」


「当ててるんだよ。興奮するでしょ。襲ってもいいんだよ?」


「何が襲ってもいいだ。ここ病院だぞ」


脇をくすぐり拘束が緩くなったところで離れた。もう少し味わいたかったみたいな顔するな。一応悠香は病人なんだから、激しく動くなよ。点滴とか刺してるんだし、動いて取れたらどうするんだよ。抱きついて取れちゃいましたとか恥ずかしくて言えない。まぁ病人じゃなくても抱きつくのは勘弁して欲しいが。ドキドキしちゃうからな。


「あ、ナースコール押すの忘れたよ。押しておこうと。これ押してみたかったんだよね。押してから何分ぐらいで来るのか興味があって」


押したらすぐに来るだろう。目覚めたら色々検査をするんだから。ワクワクした顔するなよ悠香よ。どんだけ押したかったんだよ。すると悠香はナースコールを押した。


「それで私が起きない間看護婦さんにナンパされてないよね?」


真顔でそう聞いてきた。さすがに悠香を彼女と認識してたからナンパはしてこないだろ。むしろこんなときしてきたら人格疑うわ。それに看護婦さんはお医者さんというお金持ちが側にいるのにたかが一高校生をナンパなんかしないだろ。ある程度の歳になると女子はお金持ちが魅力的に感じるんだから。


「されるわけないだろ。大切な人が怪我を負ったのを見てるのにナンパなんかしてくるはずないだろ」


「大切な人って認識されてるの?なにそれ私と義弘くんはやっぱりお似合いってことなんだね」


ふふとかいいながら悠香はほほに手を当てながらくねくねしだした。そりゃ男と女子が一緒にいて必死な表情をしてれば誰でも大切な人だと認識するだろ。まぁ実際大切な人に代わりはないが。俺はふぅーと息を吐いた。


「悠香それで助けて貰ったことだし、何かして欲しいことあるか?俺にできることならやるぞ」


「それなら付き合って?」


「いやそれは無理だ。悠香は好きだが、それは幼馴染みとしてだからな」

 

ここで家族のような存在だと言ったらヤンデレ化するのは分かっているから幼馴染みとしてと強調する。


「けちー。それならほほにキスをして、写真撮るから。口じゃないからいいでしょ」


キスか、日本じゃないが海外だと信愛の印として、ほほにキスをすることがあるし、そう思えばできないことはないか。写真を撮るところが何に使うか不安だが。


「まぁいいか、それならほほにキスをするぞ」


ほほにキスをするとカメラを構えたキスをした瞬間写真を撮った。悠香写真を見てほほを緩めている。そして悪どい笑みをした。なにか企んでやがるな。


「ふふこれで他の女子に自慢できるし、牽制もできるよ。誰も義弘くんには近づけさせないからね」


なにかぶつぶつ言っている。まぁ恐らく女子関係だろうな。またこれで彼女を作るのに、一歩後退したがこれはこれで悪くないと思っている。ほほにキスをさせて貰うなんて早々ないし、それだけ今回のことで悠香の存在がでかくなっているんだろう。まぁ恋愛的な意味で好きって訳じゃないが。


「それで悠香、体痛いところないか?」


「心臓付近がちょっと痛いくらいだよ。呪術で止血はしてくれたんでしょ?」


「まぁなあまりにも大量出血してたからな。あのままだと血のだしすぎで死ぬと思ったからな」


あのときはどうすれば生永えられることができるか考えて呪術を使った。結果的に助かったが、本当は呪術を身を守る以外に使うには、陰陽寮の許可が必要だったが。正式に陰陽寮から陰陽師として認められて呪術を使っていいってことになっているからな。お医者さんに陰陽師がいなくて助かったわ。いたら罰則を受けていただろう。


「義弘くんか助かったよ」


「こっちこそ助かった。悠香がいなければ、俺もこの場にいなかっただろうしな」


油断していたとは家全く気配を感じず近づいてきたのはビックリした。あいつは陰陽師の家だから、家ごと陰陽寮から処分されるだろう。あれだけの陰業の術が使えれば役に立つ仕事もたくさんあっただろうにもったいないな。それだけあの呪術はうまかった。まぁ厳正に処罰して欲しいが。悠香を刺したんだし。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る