第26話

嫉妬の視線を浴びながら、なんとか千葉大学病院の最寄り駅に着いた。まじでサラリーマンの嫉妬の視線はすさまじかった。呪いを知っていたら、呪いを使うレベルだ。それくらいの嫉妬の視線だった。まぁ呪われても跳ね返すだけだが。素人の呪いなんてたかが知れてるからな。そんなことを考えながら、歩道を歩く。花梨は気分がよさそうだ。得意な料理を美味しそうに食べてもらえるからだろう。悠香は本当に花梨のことを妹のように可愛がるからな。なぜ花梨だけヤンデレが発動しないんだろうな。


「着きましたよお兄様」


「そうみたいだな。いつみてもこの病院は立派だな。さすが元六医大なだけはあるな」


大学病院のなかでもこの病院はトップクラスだろう。だから安心して悠香も預けられる。ここの先生は本当に優秀だからな。器具も揃っているし。


「そうですね。私も将来お医者さんになりたいので憧れますね。まぁ志望校はお兄様に合わせるつもりでいますが」


俺は慶応志望だから花梨は慶應大学の医学部か、難易度はかなり高いが、花梨ならなんとかなりそうだな。もう高校の範囲終わってるくらいだし。学費が一番大変だが、花梨なら特待生も考えているだろう。特待生なら学費を気にしないですむ。俺も株をやって特待生になれなくても支援できるようになりたいが。


「将来の夢は大切にな。夢が努力をする理由となる」


「はい、頑張って医学部に入ります」


俺達は病院内に入った。いろんな患者さんがいるな。若い人から年老りまで。共通してるのはみんな花梨を見て鼻の下を伸ばしてるところだ。その鼻潰してやろうか?


「それじゃ行くか」


俺は回りに威圧感を出しながら、進む。すると男達はそれで恐怖を抱いたのか、目を背ける。こんくらいで目を背けるくらいなら話しかけようとするなよ。花梨の彼氏になるなら、俺の威圧感ぐらいなんでもないようにしなきゃ認めないぞ。陰陽師として悪霊や妖怪に会うことも多いだろうしな。これくらい乗り越えてもらわなきゃ困る。


「すみません。悠香のお見舞いに来た土御門義弘というものなんですけど」


すると受付の人が対応してくれて、俺達はすんなりと病室に向かうことができた。まぁ二回も救急車乗れば名前と顔くらい覚えられるよな。俺達は談笑をしながら、病室に向かう。

 

そして病室前に着くと、俺達は中に入った。


「よう、悠香元気か?」


「あ、義弘くん。ごめんね。私が振った人が迷惑かけて。会ったらどうしてやろうかな。やっぱり片腕ぐらい使えなくするかな」


怖いこと言うなよ。片腕使えなくするのは重すぎるだろ。まぁ何かしらのダメージを与えるのは賛成だが。悠香があいつに向かってあなたのような人は好きにはなれないむしろ好きと言われて虫酸や怒りがわくよといえば再起不能になりそうだが。


「まぁそれは置いといて、今日は花梨ちゃんもいるんだね。そのバックの中にはお見舞いの品でも入ってるのかな?」


「喜べ悠香。俺達の手作りの料理だ」


「嘘!義弘くんの手作りなんて何年ぶりだろ。それに花梨ちゃんの料理なんて、小の病院の病院食食べてきた私からするとすぐにでも食べたいよ」


「喜んでもらえて何よりだ。それで傷口は後に残るのか?」


「うん、心臓付近にね。でも気にしないで、これは義弘くんを守れた勲章なんだから。もし気にしてるなら私とこれからも変わらず過ごしてほしいな」


てっきり付き合ってというものかと思っていたが、俺はどうやら悠香を勘違いしてたようだ。悠香は無理矢理付き合ったりしない。あくまで勝負をして勝ち取る。まぁ邪魔なものは潰すんだろうが。それは悠香が俺のことを気になる女子が俺を傷つけるんじゃないかというのが行動の原理だ。実際花梨は遠ざけてないのが理由だ。


「わかった。これからも一緒に時を刻もう」


すると悠香は優しく微笑んだ。その微笑みに俺は思わず見惚れてしまった。これが自然な美少女の笑みか。すごい破壊力だ。好きじゃないのに心が惹かれる。


「それで、義弘くんは何を作ってきてくれたのかなぁー」


「マッカンケーキだ。味は保証するぞ」


「マッカン味のケーキなんて、義弘くん作れたんだ。甘いケーキか。楽しみだなぁー」


「まぁその前に花梨の作った料理でも食べてくれ。俺は担当医に昼入らないと言ってくる」


そう言って俺は病室をでた。担当医はたしか美人な人だったな。悠香話してるだけでヤンデレ化しないよな?まぁあっちから近づいてこないし大丈夫か。俺は受付に着くと、向之原先生を呼んだ。するとスタイルがよく、長い綺麗な黒髪を靡かせて登場した。


「待たせたわね。それで何用かしら?」


「うちの妹がお昼作ってきたのでお昼大丈夫ですよと伝えに来たんです」


「そうなのね。分かったわ。調理係に伝えておくわ。それで土御門君この後夕御飯でも一緒にどうかしら?今日ははや上がりで作るのもめんどくさいから外で食べようと思っているのよ」


いやなんで、俺を誘うんだ?向之原さんならモテそうだが。わざわざ一高校生と食べに行くメリットがない。


「他の人と食べたらどうですか?向之原さんは美人なので男はいくらでも行く人はいると思いますよ」


すると向之原さんははぁーとため息をつく。そして他のお医者さんを一瞥した。もしかして誘われないのか?こんな美人なのに?


「他の医者は看護師と食べに行くのよ。みんな自分より学歴が下の人と行きたがるのよ。だから医者はモテないわ。それにあなたみたいなイケメンを逃すわけにはいかないわ」


いや俺高校生なんだが。さすがに二十代とはいえ年上すぎるだろ。





















 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る