第21話 OLさんと「あの人」#6

正体のわからない男に襲われ連れていかれるがままについていくのは怖い。


真奈津この時時間がゆっくり流れていくのを感じた。それで今いきなり、何時なのかが気になりはじめた。最初、怪しい男に声をかけられたときから、何分がすぎたんだろ。5分、10分もしかすると30分以上すぎたかも知れない。普段あまり見ない時計もこの時だけはみたくなるのが不思議だ。妄想するのが好きな真奈津、よりによってこういう時妄想してしまうのかと自分のことがおかしいと思った。いや、自分の問題じゃない、死ぬかも知れないからこうなるのか。だからこそこう思ってしまうのかも知れない。


とくにこの変態やろうに暗い路地裏に連れていかれてああいうことや、こういうことをされて惨めな姿になるだろう。それで用が済んだ男は、ポケットに隠しておいた凶器で私を刺して逃げるだろう。一人で取り残されたわたしの惨めな姿を、わたしは魂だけ抜け出して空中で私の死殻を悲しい眼でみるだろう。私を犯した犯人は私の携帯やら財布やら、私の赤いパンツまで戦利品と思ってこの場をさるだろ。


「しまった」今日穿いているパンツの色を思い出した。「なんでわたしは今日、よりによって真っ赤なレース付きパンツを穿いて出かけてしまったんだろ」いわゆる勝負パンツだ。

と思った瞬間また妄想がはじまる。


私は確実に死ぬ。この事件の捜査がはじめ私の遺体を鑑定をするときのことを想像してしまう。警察はこう結論出すんだろう。

「遺体から赤い繊維みたいのが検出されました。これは赤いパンツの繊維ではないかと思われます」


「それでこの女性は年末の約束に赤いパンツを穿いていった。このパンツは勝負パンツの痕跡みたいです」


「これから考えられるのは、この被害者の女性は事件当時誰かと合う予定だったかも知れません」など勝手に人のことを判断しながら、挙げ句の果て犯人は捕まらずじまいになるだろ。


結局犯人はみつからず、わたしに起きた事件はことは未解決事件になるだろう。それで私の死が世間で忘れられているだろう。何年後または何十年後という時間が経って、ミステリードラマ化されるだろう。タイトルはなんになるんだろう。「20代女子大生と彼女の赤いレース付き勝負パンツの行方」的などうでもいいタイトルになるのかな。わたしの無惨な姿が軽く取り扱われるかな。事件が起きたそうそう、みんな興味を持っていたことが何十年もすればゴシップのアテだけのことになるだろう。私の顔や名前はすでに忘れられて、わたしの穿いた赤いパンツのことしか覚えてないだろう。


このような妄想で真奈津のどうでもいい妄想で自分のことを変に思う自分を自覚した。自分の身に起きろうとすることを認めたくないからか、それともどうせ死ぬなら、綺麗な死に方をしたい乙女の気持がこう考えさせたて気にしてしまうのか、自分のことが解らない。とにかく怖いだけだ。そう思っているとき、もう一人知らない男の声が聞こえて、はっと我に返った。


「おい、てめえ俺の友達になにやってんだ」とお酒とタバコの臭いが混じった臭いがしてきた。さっきまで親友のミカちゃんと一緒に女子会をしていた居酒屋のことが思い浮かんだ。


真奈津を襲ってきた男が振り向いてみたとき真奈津の身も一緒に振り向かされた。真奈津はあの低くて強いトーン声の主の顔み見た。それで瞬間カレの目と真奈津目が合った。その目は大きくて今にも真奈津に「安心して今助けてあげる」というかのような眼差しだった。

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