第13話 カフェのバイトさんと「あの人」#13

「もし、もーし」今回はいとも陽気だといわんばかりの元気な声で桜ちゃんより先に声をかけてみた。


「もしもし、大丈夫」

「うん、別になんもない」と自分でいいながらこれはよくないと思いきや、もう言ってしまったことだししかたないと思った。


「そう。ならいいけど。でもさ、あんあり無理しなくていいよ」

「なにがー」と再び陽気な真似をしてみた。

「色々ね。仕事も恋も自分一人だけ頑張ろうとするとすぐつかれてしまうからさ」

「別にそんなつもりはないって」と少々怒りっぽい口調で返事してしまってしまったと後悔した。

「わたしもね。明美ちゃんも知ってるしょ。何でも一人したがるタイプでしょ」

「うん。よーく知ってる」

「そう。それが明美と出会ってから友達になってから少し変わった」

「なんの話」と少し笑いながら聞いてみた明美だった。

「ほら知ってるでしょ。わたしの嫌いな話」

「それな。もちろん知ってるもん。時々言いたいけどガマンしてる」

「そ、そ。たぶんわたしあの性格のままだったら今も一人ぽっちだったかもしれない」

「そんなことないよ。桜ちゃん可愛いし」

「そっちの話じゃなくってば」

「わかってる。桜ちゃんって可愛いし、愛想もいいし店長にも好かれるでしょ。

よく遅刻してるくせに」

「それもあるね」

「でしょ。わたしにはできない。あんな遅刻してきて好かれるってなんか魔法でも使ってるのかなと思ってしまうほど」

「別に魔法とか使ってないもん。ただ優しいだけ」

「どうかな。もともと魔法使いだったりとか。その魔法でわたしも惚れさせてたりして友達になりさせた気がするけど」

「ぜんぜんないってわたしそんな器用じゃないし」

「器用ならできるってことなの」

「うん。もうそうじゃないってば」

「知ってるって」と自分でも不思議なほど心が和らぐようなきがした。

これが桜ちゃんのもっているあの不思議な魔法的にものかもしれない。

桜ちゃんの一緒に話していくとどんどん話にはまっておしゃべりになったり素直になりたい気持が沸き上がるような感じ的にことだ。


それでこの不思議な魔法的にものかもしれないものを「あの人」ももっていると思っている、たぶん。だからなんとなく「あの人」のことを馴染みに思って自分から親しみを感じてしまったかもしれない。その魔法的な力をもっている桜ちゃんもなんとなく「あの人」のことを悪くは思ってないでいるかもしれない。だから文句は言ったりはしているものの嫌いとは思われないのが伝わってくるのだ」。

桜ちゃんほんにんは実際どう思ってるかしらないけど。


と思っているうち、今思ってたことで一つ謎が解けたような気がした。そして「そうか、そうたったんだ」と何か納得したかのように明美は独り言を言った。



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