第11話 カフェのバイトさんと「あの人」#11
明美は小さい時から恋愛ジャンルのドラマや映画がすきだった。特に一番気に入ったのがスローモーション演出だ。主人公の男と女が恋に落ち、お互いの気持を確認する場面やはじめてのデートに出かけた時のドキドキ感、目を合わせているだけで幸せな瞬間などを表現した演出だ。2人だけの空間が作られ、回りと違う時間の流れを表現した場面が一番すきだった。
2人だけの空間が作られ、回りと違う時間の流れを表現した場面が一番すきだった。街で通りすがりの人に邪魔されず、守られて主人公2人だけの空間ができるというのは想像するだけでどきどきする。その演出が本当に好きだったし実際に恋するとそうなるのか経験したくもなった。残念ながら彼氏の田中君との間では経験したことがない。田中君と付き合いはじめたときからどきどき感はあった。何かイベント事をしたときにわくわく感も経験した。しかしこの肝心なスローモーション演出は今だに一度も経験したことがない。なので、このスローモーションはただの演出だと諦めざるを得なかったのだ。その思っているからこそ、いつか絶対絶対このスローモーション演出みたいなことを経験したいという願望がどんどん強くなったし夢も見ている。その夢が今叶おうとする。今日明美は、人生初のスローモーション演出的なことを経験することになる。
明美はゲーセンを出て「あの人」の姿を見掛けた時点へ戻り、少しそこでぼうっと立ったままだった。そこで桜ちゃんとやりとりしかけた事を思いだし、もう一度メッセージを確認しようとした。その時、左肩を誰かにぽんぽんとされる感覚があって振り返ってみてはっと息が止るようになった。明美の目の前に「あの人」左手で明美の左肩をたたきかけたままの姿勢で宙に浮いている、その腕の主が明美のことをみつめていた。それで明美だと確認したかのように微笑みを込めた顔で明美を見つめてきた。その「あの人」の目と自分の目が合ったとき、明美はすぐは誰なのか認識できなかったけどまもなく「あの人」認識しはじめたからは顔が真っ赤になる感覚と胸がときどき鼓動を感じはじめた。
その瞬間、明美は人生初のスローモーションを経験することになる。
「あの人」がわたしをついてきた。いや、それは違う。明美のほうが「あの人」をついていこうとして、それが失敗したのだ。それで諦めてたのを「あの人」にバレただけだ。本当に「あの人」にばれたのかはしらない。もしばれたとしても聞いてこないでほしかった。もしそれを聞かれてしまったら、もう「あの人」には見せる顔がなくなり親友の桜ちゃんにも知られたら、こっぴどく怒られるのが想像できたからだ。「あんた何考えてんの、正気なの」みたいに怒るときの桜ちゃんの怒鳴り顔はあまりみたくなかったからだ。それでもし「あの人」に「ついてきましたか」とか言われたら適当にごまかそうとした。けれど、明美が自分をついてきたのかどうかは、明美にとっては知らないが「あの人」がそのことを知っていたも聞かない人だった。
「あの人」は優しいからだ。
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