第39話 OLさんと「あの人」#24
こうやって「あの人」と運命的な出会いを果たした真奈津は「あの人」のことを「好きになった」という自分の気持ちに戸惑いと悩みで週末ずっともんもんしていた。その真奈津に偶然にも週明けの月曜日に親友のミカちゃんからかかってきた電話があった。それを受けた真奈津は、ミカちゃんの今の状況と将来のことなどに関して聞いた。その電話の後、真奈津も自分のことを真剣に考えてみるのがいいと思った。特にミカちゃんに聞かれた「好きな相手」や「ミカちゃんの結婚話」の話の後、自分の今の状況をどうすればいいのか真剣に考えるべきではないかと思った。
一個前の彼氏にフラれた時から恋愛や結婚に関して考えないようにしてきたし半分は諦めていた真奈津であった。けれど完全に諦めたのではなかった。時々会社の人々と恋愛や結婚話をしたり、寿退社をする同僚のことを見たときなど、色々恋愛や結婚に関して考えてみる機会があった。しかし、その度に出した結論はいつも同じだった。「私には恋愛や結婚はむいてない」という思い続けてきた。今まで自分から誰かのことが「好き」になったことは一度もなかったし、どうやって好きになればいいかも分からなかった。真剣に自分の気持ちに目を向けるより諦めてしまえば楽だから、そうしてきただけだ。何故なら真剣に考えれば考えるほど昔の辛い過去の経験が蘇って惨めな自分の弱さを実感してしまうめげるだけだからだ。
前の彼氏にフラれた後できた心の傷はまだ完全には治っていない。アレからもう3年近くの月日が過ぎたのにまだ治らないのは苦しい。時間が解決してくれますようにと、願いながらずっと待ち続けるしかない。もちろん最初よりはその傷口の痛みは薄くなりつつある。けれど完全に治るにはまだ時間がかかりそうだ。この心の傷が完全に治るまで誰かと会うのは避けたい。そう思っていたからこそ、恋愛や結婚に消極的になったのだ。それでまた、そう思っている理由が一つあった。前の彼氏と付き合ってる最中、心に留めていること、それは元カレの浮気疑惑だった。物証はなかったものの、何度か状況的に浮気をされたのかも知れないと思ったことがあった。しかし、それを咎めたりはできなかった。もし、そうしてしまえば浮気されたという疑惑が現実になり、それでショックを受けて精神が崩れそうだったからだ。「人生で一番好きになりたかった人、結婚したかった人、私を危機から助けてくれた人」に裏切られるのはこの世で一番ツラいことだからだ。それを恐れてわざわざ浮気という言葉を言ったり掘り出す必要がないと思った。なので元カレに別れを告げられたときも、素直に「うん、分かった」と言うほか方法がなかった。それからずっと一人で「つまらない自分のせいでフラれた」と自分を説得して納得するしかなかったのだ。そうしてきた真奈津の心境の変化が訪れたのは親友のミカちゃんからの電話の後だった。
「幸せの競い合い」真奈津は自ら気づいてないものの、無意識に追求するかのようになってしまったのかも知れない。女性特有のものとは言えない、そうでもないとも言えない「幸への拘り」。女性の間では見えない「幸せの競い合い」がよく起きているのは間違いない。たとえば、一方の友だちが幸せな結婚生活をしているのを見たり、話を聞いたりすると「私も幸にならなきゃ」と思い、その友だちみたいに幸せになりたくなって結婚を早まったりすることだ。その友だちよりもっと幸せになる必要まではない。ただ先に結婚した友だちと同レベルの幸せを掴みたい。そのためには「結婚」という人生一番の夢を早まるのが最低限の目標となる。それを果たすためなら誰とでもいいと思う人もいるかも知れない。真奈津もついそう思ってしまうようになった。そのきっかけが親友のミカちゃんからの電話だった。親友のミカちゃんはいつか結婚する。1年後、2年後、またはもっと先のことになるかも知れない。けれど、自分よりは先に花嫁になるのは間違いにない。なのでその前に私も早く誰かと付き合うようにしておく必要がある。新しい彼氏も作り、その彼氏と一緒にミカちゃんの結婚式を参加したい。次は私の番になるかも知れない。そうできたら幸だ。そう思いはじめていた真奈津の頭に浮かんだのは「あの人」だった。
真奈津自分から「好き」と想いを抱くようになった相手。その想いが本物がどうかはまだよく判らない。
それでも今すぐできることがないかと思うとしたら「あの人」の存在が先に浮かぶし、一番都合がいいかも知れない。「あの人」と付き合って結婚にゴールすればこの上にないことだ。もし結婚できなくてもいい。ただミカちゃんに「今付き合っている人いる」とか聞かれるとき「うん、もちろん居るよ」堂々と言える人が傍に居てほしい。それで十分だ。さしずめ、今わたしの目の前に現れた「あの人」しかいない。なので「あの人」を運命の人と信じてみたい。そのためには自分が変わらなければならない。今のままではダメ。だから変わろう。そうしてみよ。今のままずっと一人で居るよりはいい。ずっと一人ではなんにも起こらないし変わらないのだ。
いつまで過去に捉えているのは良くない。いつまで古傷が治るべきか。まだ完全に治ってない古傷が治るのをいつまで待つのは無理だ。一生かかるかも知れない。このままずっと待つだけで、もし古傷が治らないなら、ただ逃げ回ることに過ぎない。時間が解決してくれるのを待つのはあまりにも長いし無謀だ。なので「シアワセ」という塗り薬を古傷に塗たほうが早いかも知れない。今の私にできることはそれしかないと考える。そうすれば今のままの惨めな自分への気持ちもすぐ忘れそうだ。
そうこう一日中色々考えていたらどんどん頭が痛くなる気がしたので考えるのをやめて行動に出てやってみようと思った真奈津は、どうすればいいのか少し悩んだあげくおかあさんに聞いてみる事にした。どうせ。どうもがいても答えは出せないし、本当の自分の気持が分からないのでいるならこういうときに頼りになるのはおかあさんしかいないと思ったからだ。
本当に自分の気持がわからないときはどんなことをすればいいかなどいい人の見分け方みたいなのをよく知っているかも知れない人に聞くのが一番だというからだ。それで母親の由紀子に聞いてみることにした。ただ、今好きな人または気になる人がいることは伏せておきたい。聞かれたらつい言ってしまいそうだから、ただ「もし」または「たとえば」という表現を使って「もしおかあさんならどうする」とか「おかあさんはどうしたの」または「どんな時、結婚の確信をしたの」などおかあさんの経験を聞いてみる形で話をアプローチして聞いてみるとした。自分の心中は明かさないように注意したい。それでいつおかあさんに聞くのがいいかと思ったらやはり、金曜日が一番だと思った。普段のおかあさんは帰りが遅いしゆっくり
話を聞くにはやはり金曜日しかないかも知れない。それと金曜日の気分はこういう話をするにちょうどいい。金曜日なら自然に切り出せそうだ。金曜日の気分でこういう話を自然に聞けそうだし疑われる可能性も低いからだ。
それでできるだけ金曜日まで最近の出来事やミカちゃんの話は考えないようにした。自分では結論は出せない。自分では解決できないことを延々悩んでも頭が痛くなるだけで時間のムダなのだ。そう思ったからか少し気が軽くなったと思われた真奈津は、金曜日まで頑張って仕事に集中するように心をきめた。
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