第23話 OLさんと「あの人」#8

「あの、よかったらこれどうぞ」と


今時ハンカチを持ち歩いてる男。それをみてなんとなく「この男はいつでも女を口説く準備ができている」と勝手に人の嗜好を判断する自分に飽きれた。

それで思った。「わたしの性格ってホントおかしい」と親切にしてくれてる人のことをなんでこう思ってしまうんだろ。素直に感謝すればいいのになど


それで一応知らない男の親切にすこし頼ってみることにした。危機に落ちかけた女の特権的なことをしてみることにした。

男が渡してくれたハンカチで目を拭きながらこっそり鼻水も拭いた。鼻をかむ音は出さず、ゆっくり鼻水を拭いた。


それである程度気持が落ち着きはじめたころ、今何時なのか気になった。そして早く家に帰りたくなった。このままずっとくらい路地に屈んでいるのは怖いし、めそめそしていてもなんにもならないからだ。


そう思っているときも知らない男はなんにもしてないし言ってこなかった。そのせいか真奈津はまた、この男への好感度があがったのを感じた。それで立ち暗みしないようにゆっくり立ってみた。そこを目の前の男の「どうしていいか、手伝うべきか」の戸惑いが見えてきた。それを一応ハンカチを持ってない左の平をみせながら「大丈夫」というサインを送った。


ゆっくり背を伸ばし頭だけ下をむく姿勢で少し目の前に立っている男に近づいてみた。それで少し声を出してみた。まだ怖い、知らない男に声をかけたくなかったがしかたなかった。


「トイレ。。駅。。そこ。。」とやっと声を出して短く今したいことを伝えた。まだ頭がうまく回らないのだ。


けれど、真奈津の言ったことを聞いて、男はなんなのか一瞬戸惑いの表情をみせるもすぐわかったかのように自分の車らしきものを指でさした。

それがなんなのか一瞬気づいてなかった。真奈津は十秒くらい暗闇の中を見てからこの男が何を言いたいのかがわかった。それを「よくもこの時にも口説こうとする」みたいなことを思ったが口にはださず、もう一度言ってみた。


「トイレ。。はやく。。駅まで」

「あ、トイレ行きたいですか。車はだめ。歩けます」

「うん。。」

「わかりました。いっしょに行きましょう」

と男が先に歩きだした。その後ろ姿をみて少し安心した。あっさり諦めてくれて助かったの思った。


真奈津はゆっくり男の後ろをついていく。そう歩いていくうちに真奈津の目には大通りがみえてきて少しずづ安心する。5分くらい歩いたか、やっと大通りに出だ。暗闇が明るい街灯の海に変わった。その瞬間身体中の緊張が解れ、両足から力がぬけていくのを感じ前へ倒れるような姿勢になった。それを真奈津を歩いている男の背中に触れて男は何かと思ってる表情で真奈津を振り向いてくれた。


「大丈夫ですか。体調とか悪い」

「大丈夫。。少しめまい。。」

「歩けます。ここで待てますかなにか薬でも買ってきますから」

と男はいとも親切そうで心配の気持を感じる声で言ってくれた。

「さっきまで思ったこの男のチャラさは勘違いだったのかな」と一瞬思ったが、それより早く駅へ行ってトイレに行きたかった。


「はやく。。駅。。。腕だけ。。。」

「腕、俺のですか。じゃ」

と何となく言いたいことが通じたのか、差し伸べてきた男の右腕の二の腕部分の服を自分の左手の指で摘む状態でまた右手で男の上腕部分に手をおいてみた。できるだけ自然にカップル見たいに振る舞うのがいいとおもったからだ。


そうしてくる真奈津を見ていた男の「おや」とする眼差しが感じられたが、できるだけ強く男を真奈津の体で押しながら促してみた。


それで二人はまた5分くらい歩きいて、駅の入り口前についた。

今何時かはわからないがこの街と駅はいつもひとでいっぱいだと思われた。真奈津の好きな街だ。それが今日は最悪の場所になろうとした寸前知らない男に助けられほんとうによかったの思った。これだけは本気だった。


駅につきさっきと同様、真奈津は体で男を押しながらロッカのほうへ促した。

ロッカは駅の入り口のすぐ横にありそのロッカの奥の壁側は人二人くらいぶんのスペースがあったそこに男を押して行った。


そこで真奈津は男に「頼む。トイレ行ってくるから待ったください」と言いたいがために自分の右手の二番目の指で地面をさしてみた。最初男は何をされたのか理解できない様子をみせたか真奈津が何度か指で地面をさしてる所をようやく理解したかのようにどうぞといいながら笑顔をみせた。


その顔をみて改めて思った。すてきな笑顔だった。

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