第22話 OLさんと「あの人」#7

「だ、誰だ。。」

「その女の子の連れだよ」

「つ、連れって友達いたのか。。」

「そうだ。だからそのまま彼女放っといて去れ。なら許すから」

「ほ、、ほんとうなら証拠みせろ」

「証拠もくそも、俺の友達だからさ」

「うそつけ、な、名前は」

「彼女か、ナっちゃんだ」

「な、なっちゃんだと。。」

「そうマナツだ、真夏のマナツだ」とあの男に呼ばれる自分の名前をきいた瞬間くすっとしてしまた真奈津だった。何故なら改めて自分の名前をよく間違っていう人が多いと知ったからだ。自分の名前は真奈津で真夏ではない。知らない人は間違い確実だのだ。と思いながらこんな時に笑ってしまうのは正気でないと思う。しかし状況が状況で緊張や怖さが解れたせいか無意識的にでてしまったかも知れないと思った。


「そっか。知り合いいたんだ。。」

「ああ、だから今回だけは目瞑ってあげるからさ」

「マ。。マジだな。。」

「もちろんだ。だからそのまま去れ。たまたまこうなる時あんだろう。よくわかる」

「そう。これはアクまでたまたまだよ。俺なんにもしてない」

「そう何にもしてないし、これからもなんにもしないでほしい。いいだろ」

「そう。このまま俺のことみないふりさえしてくれりゃ」

「約束するよ。今日のことを大事にするのは君にも都合が悪い。だろ」

「そ。。だ。じゃ俺このまま帰る、帰してもらう」

「そう。そのままなんにもしないで帰れば十分だ」

「わかった。じゃ。俺行くからついてこないでよ」

「おう、心配いらないよ」と聞いたとたん、真奈津を襲ってきた男は、会話が終わったか思ってすぐとんずらした。そのときもまた、自分の胸に振られる。この変態野郎の手の感触が今まで経験した感触の中で一番嫌いなものになった。これは今後忘れようとしても中々忘れられないことだった。未だにいや、たぶん死ぬまで残っている心の傷と一緒に生き延びていくものだった。


真奈津を襲ってきた男は逃げ去った。真奈津はその男の逃げ去る姿を見たかったけど怖くて見られなかった。それからまもなく、ふうと安堵の緊張が解れたのか立っていた場所でそのまま屈んでしまった。体中から力が抜けてしまったのだ。

それで安堵の涙が爆発的に出始めてた。けれど、真夜中だったし人の前で大声で泣くのもいやだった。また、ここで大声で泣きだすとなにか起きたのかと人の興味を引くようになるかも知れない。それは自分の助けてくらた人に迷惑にもなるなど、この期に及んでよくも思いついたことだった。とにかく出きるだけ小さい声でヒクヒク泣くように頑張った。


何分泣いたんだろ。今も覚えてない。聞いてもない。確認もできない。とにかく人生はじめての長くそしてたくさん泣いた気がした。泣くってこんな感じなのかはじめてきづいた。


それでさっきからずっと真奈津の前に立っている男のことが気になってちらっと頭をあげて見てみた。目の前の男は、あの変態野郎が逃げ去った方向を見たり、真奈津が泣いているとこをみたりしながら見守っている形で立っていた。それでこの時、真奈津は泣きながらも一つのことを思い出した。初冬なのに余計に寒い日だった。冬にも関わらず親友と楽しい時間を過ごすため、久しぶりにコートも着たり、短いスカートも穿いたり出かけたのを思いだしたのだ。そして屈んで泣いている自分の姿勢を見下ろしてる男には、真奈津のパンツが確実にみえてしまうと思ってた。


「ヤバい、今日は赤なのに」

「よりによって今日は赤、よく目立ってしまう。どうしよう」

「目の前に立っている男がわたしの赤いパンツみて興奮して襲ってきたらおしまい」

「つぎこそホントおしまい。これいじょうはマジ無理」と男が聞いたら確実に怒られるかもしれないとを勝手に考えていた。


しかし、そんなことを気にする余裕はない。どっち道今わたしは死の直前助けられ、起死回生したのだ。パンツなどみせてあげよ、見られてもどうでもよかった。


と思っている最中、何か車のドアが開けられ、閉まった音が微かに聞こえた。

それでまもなく目の前に立っている男の声が聞こえてきた。

「あの、大丈夫ですか。よかったらこれどうぞ」


なんのことかと思いながら少しこうべをあげて男のほうを見てみた。瞬間男の手が目の前にあってドキっとした。またなにかされるのではないかと。しかし男の手の平にあるものを見て以外と思いつつ安心してまたくすっと笑った。男にはばれないようにと願いながら。


一瞬なんなのか気づいてなかった。男の手の平にある物はハンカチだった。少しダサい柄のハンカチ。今時珍しいもの。とくに若い人はほとんど持ち歩いてない物だった。それをみたとたんまたくすっと笑ってしまった。


このハンカチこそ、のちほど真奈津の人生に「運命のイタズラ」的なことを感じさせるものになる。このハンカチこそが「あの人」と真奈津をつながってくれたものだった。けれど、今の真奈津にはそれを知るようもなかったのだ。

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